バングラデシュ政府、繊維原料の輸入に対する前払い法人税を撤廃

(バングラデシュ)

ダッカ発

2025年07月22日

バングラデシュの国家歳入庁(NBR)は7月17日、綿や化学繊維(人造繊維)の輸入に対する2%の前払い法人税(AIT)を即時撤廃すると発表した。AITは取引の度に源泉徴収される法人税で、6月に出された官報通知に基づき、衣料品や繊維製品の原料を含む150品目の輸入に対し新たに課されていた。AITは年次申告の際に調整できるものだが、今回の撤廃決定により、綿のほかアクリル繊維、モダクリル繊維、合成短繊維、人工短繊維、ポリエステル、化学繊維のくずなど、HSコード5201~5507の品目がAITの対象外となる。

バングラデシュ政府は、IMFから融資を受ける条件として、税収の増加や補助金削減を含む支出の合理化を要求されてきた。繊維原料へのAIT適用はその一環とみられるが、事業コストの増加やアパレル産業の競争力低下を招くとの理由で、バングラデシュ繊維工場協会(BTMA)などの業界関係者が強く反対し、AITの支払いを拒否する意図でチッタゴン港に到着した綿の輸入手続きを行わないといった事態も発生していた。

BTMAのショーカット・アジズ・ラッセル会長は、現地メディアの取材に対し「NBRは年末に税額を調整できるというが、その手続きは非常に煩雑だ。政府が物事の簡素化に取り組んでいる最中、税の徴収方法を複雑にするのは理屈に合わない」と述べていた(「ビジネス・スタンダード」紙7月17日)。AITの撤廃により、アパレル産業におけるバングラデシュの競争力は維持される一方、財政健全化に向けて取り組むことの難しさが明るみになった。

(片岡一生)

(バングラデシュ)

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