ブラジルのサンパウロ州、米国追加関税への対応として融資制度を創設

(ブラジル、米国)

サンパウロ発

2025年07月31日

ブラジル・サンパウロ州のタルシジオ・デ・フレイタス知事は7月22日、米国のドナルド・トランプ大統領が7月9日に発表したブラジルへの50%の追加関税賦課への対応策として、米国向け輸出企業を対象とした低金利融資制度「ジロ・エスポルタドール」を発表した(注1)。企業は運転資金確保のため、最大2,000万レアル(約5億3,200万円、1レアル=約26.6円)の融資申請が可能。制度の予算総額は2億レアルを見込んでいる。

2024年のサンパウロ州から米国への輸出額は135億7,189万6,433ドルで、ブラジル全体の対米輸出額の33.6%を占める。州別でみると最も割合が高い。主な輸出品目は航空機・関連機器(構成比18.0%)、土木建設用機械(9.3%)、果実・野菜のジュース(7.8%)などだ(注2)。

ブラジル柑橘(かんきつ)果汁ジュース輸出業者協会(CitrusBR)のイビアパバ・ネト会長は、現地紙CBN(7月24日付)のインタビューで「この程度の融資制度では問題は解決できない。歓迎すべき措置ではあるが、問題の規模が大きすぎる」と述べた。

フレイタス知事はさらに、X(旧Twitter)の公式アカウント(7月24日付)で、商品流通サービス税(ICMS、州税)の税務クレジット(注3)を抱える米国向け輸出企業に対し、税務クレジットの還付を認可すると発表した(注4)。還付の総額は10億レアルを見込む。

(注1)サンパウロ州に加え、ゴイアス州(7月22日)、リオ・グランデ・ド・スル州(7月25日)、パラナ州(7月25日)、ミナス・ジェライス州(7月29日)も、類似の融資制度の創設を発表している。

(注2)ブラジルを代表する航空機メーカー、エンブラエルの本社および工場はサンパウロ州のサンジョゼ・ドス・カンポス市に所在する。

(注3)ICMSは収税で州ごとに税率が異なることから、企業が輸出入を伴う生産過程や、税率が異なる他州へ製品を販売する過程で税務クレジットが累積するケースが多々ある。クレジットの還付には州政府の認可が必要だが、許可を得るのが難しいため、多くの在伯企業が抱える問題の1つだ。

(注4)パラナ州も同様の措置を発表している。

(エルナニ・オダ)

(ブラジル、米国)

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