米エアタクシーのジョビー、トヨタと連携し量産化加速、米政策と歩調合わせる
(米国)
サンフランシスコ発
2025年07月18日
電動垂直離着陸機(eVTOL)、いわゆる「エアタクシー」を開発する米国のジョビー・アビエーションは7月15日、カリフォルニア州マリーナとオハイオ州デイトンでの製造体制拡充を発表した。同社のプレスリリースによると、カリフォルニア州マリーナ拠点の施設面積を約43万5,500平方フィート(約4万458平方メートル)に拡張し、フル稼働時には年間最大24機の生産が可能となる見込みだ。同社はこの生産能力の増強に対応するため、数百人規模の正社員を新規雇用する計画としている。
拡張後のマリーナ施設では、eVTOLの製造に加え、米連邦航空局(FAA)による初期生産認証の取得、地上および飛行の試験、操縦士訓練、機体整備など、商用化に必要な機能を一体的に担う予定だ。これにより、同拠点は商用展開の中核拠点としての役割を強化する見通しだ。
また、オハイオ州デイトンでも、改修済みの製造施設で部品の生産と試験を開始しており、将来的には年間最大500機の量産体制を構築する方針だ。
生産体制構築に当たっては、出資元のトヨタのエンジニアが設計・製造・品質管理の各工程を支援しており、ジョビーはトヨタと連携して効率的な製造ノウハウを導入することで、生産のスケールアップと品質向上を図っている(2024年10月3日記事参照)。
今回の発表は、ドナルド・トランプ米大統領が6月6日に署名した「米国のドローン覇権を解き放つ大統領令(Unleashing American Drone Dominance)」と歩調を合わせるものだ。この大統領令には、eVTOLの商用展開を加速するための「eVTOL統合パイロットプログラム(eIPP)」創設が盛り込まれており、制度設備の進展が期待される。
なお、競合企業の米アーチャー・アビエーションは6月のパリ航空ショーで、eVTOLの認証と配備の合理化、安全性と規則の整合性の確保、国際市場への迅速な展開を目的として、米運輸省とともに、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドと国際的なアライアンスを発表した。これらの動きにより、両社に対する注目が高まっている(2025年3月24日付地域・分析レポート参照)。
同社は既に6月30日にアラブ首長国連邦(UAE)で、操縦士付きでeVTOLの垂直離着陸や主翼飛行による一連のテスト飛行を成功裏に完了しており、2026年の商用サービス開始を予定している。現地政府とは6年間の独占運行契約を締結済みで、制度面での整備を背景に、米国内での商用化体制も加速している。
(松井美樹)
(米国)
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