ケニアで大規模な抗議デモ発生、19人死亡
(ケニア)
ナイロビ発
2025年07月01日
ナイロビ市内をはじめとしたケニア国内各地で6月25日、1年前に発生した大規模な抗議デモ(2024年6月28日記事参照)の記念集会が実施され、デモ隊と警察当局が再び激しく衝突した。ナイロビ市中心部(Central Business District:CBD)のほか、同市のンゴングロードやティカロードで、デモ隊による投石、車両やタイヤへの放火が行われ、警察がデモ隊に発砲し、死傷者も出た。ケニア国家人権委員会(KNCHR)の27日付発表によると、19人が死亡、531人が負傷、179人が逮捕された。ケニアに進出する日系企業も軒並み在宅勤務などの措置を実施した。抗議デモの長期化を予想する声もあったが、翌26日にはナイロビ市内はほぼ通常どおりに戻った。
現地の複数の報道によると、6月6日にはオンラインメディアなどに記事を投稿していた男性ブロガーがソーシャルメディアで警察幹部に関する虚偽の情報を拡散したとして警察に逮捕され、8日にナイロビ中央警察署の留置場で死亡する事件が発生した。現地メディアは警察の暴行による死亡と報じており、警察に対する国民の不信感が高まっていた。
デモ当日の25日には、事態の悪化を受け、ケニア通信庁がテレビ局などによるデモ映像の生放送を禁止する措置を取ったが、それにケニア弁護士協会や報道各社の反発を招いた。デモ実施は事前に予告されていたが、デモ当日、ウィリアム・ルト大統領はキリフィ郡知事の親族の葬式参列でナイロビには不在だった。ルト大統領は28日、デモを激しく非難し、警察による今回の対応を擁護する発言を行った。キプチュンバ・ムルコメン内務長官は26日、メディアに対するブリーフィングで「警察署に近づこうとする者がいれば、撃って、殺す」と発言したと伝えられ、国民やメディアなどから一斉に非難を浴びている。
デモには2027年の次期大統領選への立候補を表明したデイビッド・マラガ元司法長官も参加するなど、大統領選に向けた動きも加速しつつある。前回に続き、今回のデモの中心となった「Z世代」と呼ばれる若年層などの存在感が高まり、大統領選に向けて無視できなくなりつつあるとして、各政治勢力が取り込みを図る動きも出てきていると報じている。
(佐藤丈治)
(ケニア)
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