米ウォルマート、AIと自動化技術でグローバルサプライチェーン再構築
(米国)
ニューヨーク発
2025年07月25日
米国の小売り最大手ウォルマートは7月17日、米国内で実証してきた人工知能(AI)や自動化技術を駆使して、グローバルサプライチェーンを再構築すると発表した。同社によると、カナダ、メキシコ、コスタリカなどの各国市場で既にAIや自動化技術を導入済みで、需要予測から在庫管理、配送までの全ての工程を最適化し、全体的な業務効率化を実現する。ウォルマートはこれまでも、AIを商品開発や従業員のタスク管理に活用するなど、AIを働き方の変革の重要ツールとして、幅広い分野での活用に積極的に取り組んできたが、今回の導入もその一環として捉えることができる。
今回発表された物流現場でのAI導入は以下のとおり。コスタリカの物流拠点では、パイナップルや緑黄色野菜、根菜などの生鮮野菜が夜明け前に発送され、予測型倉庫管理と輸送管理システムが最適な配送ルートを計画し、従業員が早朝に到着するまでに店舗の需要に合わせて注文を調整する。これにより、鮮度の高い食品がいち早く店頭に並び、従業員の手作業の負担軽減にもつながる。また、カナダのアルバータ州では、倉庫と配送ルートのシステムが注文の処理、異常の検出、出荷の流れまで一連の作業を最適化する。全ての工程はリアルタイムで適応する自動化技術によって管理されており、受注ミスの削減やラストワンマイル配送の迅速化を実現する。メキシコ市では、陳列棚をより有効に活用するために「自己修復型在庫管理(Self-Healing Inventory)」と呼ばれるシステムを導入しており、在庫レベルの不均衡を検知し、問題が店舗で表面化する前に、製品を最も必要とする場所へ自動的に再配分する仕組みになっている。
物流現場でのAI導入は他社でも進み始めている。アマゾンは2025年6月にフルフィルメント施設内を移動するロボットの全体的な性能を向上し、より効率的に運用するために、新たな生成AI基盤モデル「ディープフリート」の導入を発表した。ロボットの移動時間を10%短縮することで、顧客への配送を迅速化かつ低コストで実現することを目指す。アマゾンの物流拠点で稼働するロボットは現在100万台を突破しており、同社が進めてきた自動化戦略で1つのマイルストーンを達成した。ただし、AIの急速な発展は雇用喪失への懸念も招いており、世界経済フォーラム(WEF)が発表した「仕事の未来レポート 2025」では、世界の大手企業の40%が今後5年以内に、AIによる自動化を理由に従業員数を削減する計画だと回答した。
(樫葉さくら)
(米国)
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