野党立法委員24人のリコール投票、全て不成立

(台湾)

調査部中国北アジア課

2025年07月31日

台湾で726日、野党・国民党所属の立法委員(国会議員)24人に対するリコール請求(注1)の賛否を問う住民投票が行われ、結果は全て不成立となった(注2)。また、同時に行われた野党・民衆党の高虹安・新竹市長のリコール請求も不成立だった。

台湾では、2024520日に民進党の頼清徳政権が発足したが、国会に相当する立法院では与党・民進党は過半数の議席数に満たない第2党となっており、最大野党の国民党が第1党となる「ねじれ国会」の状況にある(注3)。これにより、予算案や法案の審議で与党案が否決されて野党の改定案が通ることが多く、審議にも時間を要するなど不安定な内政状況が続いていた(2024年5月30日記事参照)。現地報道によると、こうした状況を受けて民進党は支持者の市民団体を中心に、国民党は親中派であるとして国民党の立法委員に対する大規模リコール請求を実施した。民進党としては、リコールが成立し、その後に行われる補欠選挙で6人以上の民進党議員を当選させれば、立法院における単独過半数を占めることができるとの思惑だった。

一方、台湾民意基金会が2025714日に発表した世論調査では、「リコール運動に賛成しない」とする回答が47.9%と、「賛成」41.7%を上回っており、有権者の支持は十分に得られておらず、投票においてもそれが示された結果となった。

頼清徳総統は726日に、自身のフェイスブック上に「投票結果を尊重し、受け入れなければならない。今日の結果は一方の勝利、一方の失敗ではない」との声明を発表した。一方、国民党の朱立倫主席は同26日に記者会見を開き、「大罷免(リコール)は大失敗だった。偉大で賢明な台湾の人民が成熟した民主主義を発揮したことに感謝する」と述べた。

東海大学政治学部の邱師儀教授は、今回のリコールについて、「民主の救済」と「反共産党」の対決だったが、結果として「民主の救済」が勝利したと述べた。さらに、「現在の学生や若者は2000年の民進党・陳水扁政権以降の生まれであり、国民党の権威主義的な統治や反共政策に対する実感は深刻ではないため、包括的な反共のメッセージは通用しなくなっている」と指摘した(中央社727日)。

リコール投票は第2回として、823日にさらに7人の国民党立法院議員(注4)を対象に実施される予定だ。

画像 国民党立法委員のリコール投票を呼びかけるポスター(日本台湾交流協会提供)

国民党立法委員のリコール投票を呼びかけるポスター(日本台湾交流協会提供)

写真 リコール請求への署名を街頭で呼びかける市民(日本台湾交流協会提供)

リコール請求への署名を街頭で呼びかける市民(日本台湾交流協会提供)

(注1)台湾では「公職員選挙罷免法」によって、在職1年以上の立法委員、地方の首長および議員に対してリコールを請求できる。リコール請求は3段階に分けられ、第1段階では選挙区有権者総数の1%、第2段階では10%以上の署名を集める必要がある。第2段階までクリアすると、第3段階のリコール投票が実施され、同意票が不同意票を上回る、かつ同意票が当該選挙区の有権者総数の4分の1以上となった場合にリコールが成立する。リコールが成立した場合、3カ月以内に補欠選挙が行われる。

(注2)各リコール請求対象者の投票結果は中央社のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから閲覧できる。

(注3)2024年1月に行われた選挙の結果、立法院の議席113の内訳は、民進党51、国民党52、民衆党8、無所属・他2となった。

(注4)第2回リコール請求対象者の一覧は中央社のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから閲覧できる。

(江田真由美)

(台湾)

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