貿易細則の第4次改定を公布、国際宅配便を利用した輸入に対する総合税率を引き上げ

(メキシコ)

調査部米州課

2025年07月31日

メキシコ政府は7月28日、2025年の貿易に関する一般規則(RGCE2025)の第4次改定を官報で公布し、国際宅配便を利用した簡易通関の総合税率(注1)を引き上げた。適用は8月15日からで、具体的な内容は次のとおり。

  1. 国際宅配便を利用した簡易通関で輸入した産品に対する総合税率を19%から33.5%に引き上げ。
  2. 米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)加盟国を介して輸入される、輸入申告価格117ドルを超える国際宅配便貨物に対する総合税率は、従来どおり19%とする(33.5%にはならない)。

2.については、USMCAの急送貨物に関する規定(第7.8条)に配慮した措置だ。同規定に基づき、メキシコはUSMCA加盟国から輸入される50ドルまでの国際宅配便貨物について関税(IGI)および付加価値税(IVA)の課税を行わず、117ドルまでの貨物についてはIGIを課税しないことを約束している(注2)。したがって、50ドルまでの急送貨物については、RGCE2025の第3.7.35のIIIに基づき、IGIもIVAも非課税となり、通関手数料(DTA、注3)のみを支払う。50ドル超117ドル以下の急送貨物についてはIGIが免税、IVAの16%とDTAに相当する1%を加えた17%が課税される。117ドルを超える急送貨物については、IGIおよびIVAが課税されるが、以前から19%とされており(IVAとDTAで17%であるため、IGIは実質2%)、今回の改定でも税率の引き上げは行われなかった。

2025年以降、デミニミスルールが廃止

メキシコでは従来、国際宅配便で輸入される少額貨物に対する免税措置(デミニミスルール)が存在した。2025年1月にRGCE2025の適用が開始されるまでは、商品価格が50ドルを超えない国際宅配便を利用した簡易通関では、原産国・経由国にかかわらず、DTAのみが徴収されていた。2025年以降はこの免税措置が原則なくなり、米国やカナダからの輸入に限り、50ドルの範囲内で免税輸入が可能になっている。

政府はデミニミスを廃止した理由について、中国のEC(電子商取引)プラットフォームによる国際宅配便を利用した少額分割輸入による関税回避行為が横行していたため、それを取り締まる目的と説明していた。今回の税率の引き上げの目的について政府からの説明はないが、大蔵公債省は2025年の1~2月の財政・公的債務報告(大蔵公債省プレスリリース2025年3月28日付外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)において、税関における監視強化と外国の越境EC事業者に対する関税免除の廃止が奏功し、同期間の関税収入が前年同期比46.6%増加したと発表している。このことからも、衣類や履物などの国内産業の保護に加え、財政収支の改善に向けた税収増も目的の1つとみられる。

税務を専門とする弁護士のヘスス・ロドリゲス氏は、今回の増税はFEDEXやDHLなどの国際宅配業者に直接的な悪影響を与え、宅配料金の値上げを通じて、SHEIN(シーイン)やTemu(テム)、アリエクスプレス(Aliexpress)などの中国のECプラットフォームを利用するメキシコの消費者にも悪影響を与えると指摘する(「エル・ウニベルサル」紙7月29日付)。

(注1)輸入税(IGI)、付加価値税(IVA)、通関手数料(DTA)の合計。通常の輸入申告では、IGI、IVA、DTAは別々に申告するが、国際宅配便などを利用した簡易通関では、3つを合計したものを総合税率として課税する。簡易通関では、特別な関税分類コードが用いられるため、自由貿易協定(FTA)などを活用した特恵税率の申請はできない。

(注2)USMCAの第7.8条およびRGCE2025の第3.7.35は、USMCAの「原産品」とは規定していないため、協定第4章の原産地規則を満たす原産品に加え、USMCA加盟国(米国・カナダ)から輸入される非原産品も対象になると解釈される。

(注3)通関申告時に徴収される公課であり、税関システムやインフラの近代化に向けた原資として用いられる。税関法に基づき、IGIが無税の輸入については、1申告当たり436ペソ(約3,450円、1ペソ=約7.9円)が徴収される。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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