6月のインフレ率は前年同月比2.10%に低下、6年5カ月ぶりの低水準

(インド)

ムンバイ発

2025年07月18日

インド統計・計画実施省(MoSPI)が7月14日に発表した6月の全国ベースの消費者物価指数(CPI、注1)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は194.2ポイント(速報値)で、前年同月比2.10%の上昇にとどまった。2019年1月(1.97%)以来6年5カ月ぶりの低水準で、前月5月(2.82%)からは0.72ポイントの大幅な低下となった。インフレ率の低下は8カ月連続で、物価上昇圧力の緩和が一段と鮮明になっている(添付資料図参照)。

特徴的なのは、食品のインフレ率(注2)が2025年に入って初めてマイナスに転じた点だ。前年同月比マイナス1.06%で、特に野菜価格がマイナス19.00%と大きく下落したことが全体の低下に影響した。野菜価格は2024年10月の42.18%をピークに低下傾向が続いている。小売市場で供給の潤沢さが価格の安定につながっているとみられる。地域別では、都市部2.56%、農村部1.72%だった。

地場大手証券会社コタック・インスティチューショナル・エクイティーズのチーフエコノミスト、スブディープ・ラクシット氏は「6月のCPI下落は、インド準備銀行(RBI、中央銀行)にとって利下げの余地を十分に与えるものだ。2025年度(2025年4月~2026年3月)の平均CPIは、RBIが見込む3.7%を大きく下回る可能性がある」と述べた上で、「8月の金融政策決定会合(MPC)ではレポレートの据え置きが予想されるが、RBIはモンスーンによる降雨の影響を注視しながら、食品インフレの持続性を見極めようとしている」と指摘した(「ミント」紙7月14日)。

6月のCPIの大幅な低下を受け、政策金利の今後の動向に注目が集まっており、市場では、足元の物価情勢が金融緩和の余地を広げるとの見方がある。

(注1)全国ベースのCPIは、基準年の2012年を100とし、農村部と都市部の各CPIを加重平均したもの。

(注2)ここでは、CFPI(消費者食品物価指数)のインフレ率を記載。

(篠田正大)

(インド)

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