欧州産業界、米国との合意を評価、貿易の多角化やさらなる障壁撤廃を求める声も
(EU、米国)
ブリュッセル発
2025年07月30日
ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は7月27日、EUが米国と同国の関税措置に関し合意したこと(2025年7月29日記事参照)を受け、内容を精査する必要があるが、貿易摩擦の激化が回避されたと歓迎した(プレスリリース)。確実性と予測可能性はEUと米国双方の企業にとって重要であり、両者の関係に安定性をもたらすと評価した。
欧州中小企業連合会(SMEunited)は翌7月28日、合意は「現実的な解決策」としつつも、企業にとって負担であり、消費者のコスト負担も増すとの認識を示した(プレスリリース)。
欧州自動車工業会(ACEA)は28日、詳細を分析する必要があるが、EUと米国の通商関係の不確実性の緩和に向けた一歩と歓迎した(プレスリリース)。しかし、交渉により15%に引き下げられたとはいえ、自動車・同部品に従来よりも高水準の関税率が維持されたことで、EUと米国双方の自動車産業への悪影響が続くとし、両者はさらなる障壁撤廃に注力すべきと述べた。
小売・卸売業界団体ユーロ・コマースは28日、米国の追加関税に伴う最終製品の値上げや、貿易摩擦が再燃した場合、長期契約を結ぶ輸入事業者への影響など懸念が残ると述べた(プレスリリース)。EUに対し、貿易の多角化を加速し、単一市場の統合深化と競争力強化に同時に取り組むよう要請した。また、米国の高関税を回避するため、第三国からのEU基準を満たしていない製品の輸入が増加することに強い警戒を示し、速やかな税関改革とEU域外の販売事業者やマーケットプレイスに対するEU規制への適合性強化(2025年2月7日記事参照)が必要とした。
欧州鉄鋼連盟(EUROFER)は28日、鉄鋼への関税率は50%が維持され、低関税の輸入割当枠の導入や世界的な過剰生産への具体的な対応策についての詳細は曖昧であり、同部門への継続的な影響を懸念した(プレスリリース)。今後、機械や自動車など鉄鋼材を多用する製品の対米輸出の減少による間接的な影響も想定される。欧州委員会が2026年7月から新たに実施予定の鉄鋼製品に対する貿易措置(2025年3月27日記事参照)は、過剰生産や米国の関税措置の影響緩和、EU域内の生産能力強化に向け、高い実効性を持つものになると期待を示した。
欧州化学工業連盟(Cefic)は7月29日、一部の化学品への関税撤廃を歓迎しつつも、同部門は輸出志向産業であり、米国の関税措置に伴う競争力のさらなる低下を危惧した(プレスリリース)。EUは化学業界への支援策となる行動計画(2025年7月17日記事参照)の迅速かつ完全な実施のほか、米国との全ての化学品への関税を撤廃する包括的で公平な部門別協定の締結、また新規市場開拓につながる自由貿易政策に取り組むべきと述べた。
(滝澤祥子)
(EU、米国)
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