カザフスタンで2026年1月から税制改革、付加価値税率は16%に引き上げ
(カザフスタン)
タシケント発
2025年07月25日
カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領は7月18日、2026年1月1日から施行する法律第214-VIII号「カザフスタン共和国税法典」に署名した。付加価値税(VAT)の基本税率12%を2026年1月1日から16%に引き上げるほか、特別税制や税金の数を削減し、税務管理(手続き)の簡素化と税制優遇措置の最適化を行う。また、高所得者向けの累進的な個人所得税率を導入するほか、一定額以上の自動車やヨット、飛行機、アルコール・葉巻の購入に、10%の物品税を課すというかたちで、個人向けのいわゆる贅沢(ぜいたく)税を導入する。
さらに、VAT納付企業として登録するための基準となる各企業の年間売上高について、2万MCI〔月次計算指数(Monthly Calculation Index)、2025年は7,860万テンゲ(約2,122万円、1テンゲ=0.27円)相当〕から、1万MCIに引き下げることで、VAT納付企業数を拡大する。カザフスタン国家企業家会議所「アタメケン」のライムベク・バタロフ会頭によると、VAT納付企業数は、現在の約10万社から2~3倍に増加する可能性がある(「Informburo.kz」2月8日)。
オルジャス・ベクテノフ首相によると、税制改革によって2026年から国家歳入は3兆テンゲ以上増加する見通しだ。増収の多くはインフラ開発予算に充て、道路や鉄道の建設、電力供給、エンジニアリングネットワークの近代化といったインフラ開発の財源とする(「Kapital.kz」6月27日)。
財政健全化も目的の1つだ。エコノミストのガリムジャン・アイトカジン氏は、カザフスタンでは支出と予算収入の差が拡大し続けており、その差額が借入金や国家基金でカバーされる傾向が顕著になっていると指摘した(「フォーブズ・カザフスタン」1月28日)。2024年の財政赤字は3兆6,000億テンゲ(2023年は3兆1,210億テンゲ)に上ったほか、赤字補填(ほてん)のため過去10年間で40兆テンゲが国家基金から引き出されていた。国民経済省のアザマット・アムリン次官(当時、現・第1次官)によると、このペースで引き出しが続けば、国家基金はすぐに底をつく可能性がある(「Ulysmedia.kz」2月7日)。こうした状況下、今回の税法改正は財政の立て直しも目的にあるとみられる。
セリク・ジュマンガリン国民経済相は、新しい税法を導入すると、インフレ率が2.2~3.0%上昇するとの見込みを示した。2026年1月1日の税率引き上げを待たずに、既に多くの企業がVAT引き上げを見越して、値上げを開始しているという(「LS」6月23日)。
(ウラジミル・スタノフォフ)
(カザフスタン)
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