6月の米ISM製造業景況感指数、やや改善も関税政策による雇用・物価への影響の深化がみられる

(米国)

ニューヨーク発

2025年07月03日

米国サプライマネジメント協会(ISM)は7月1日、6月の製造業景況感指数外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。指数は49.0で、前月から0.5ポイント改善し、ブルームバーグの市場予想(48.8)をわずかに上回った。

項目別では、指数の構成要素のうち生産(50.3、前月45.4)は基準値である50をわずかながら上回った。ただし、生産に関しては、「景況感の先行き不確実性で生産量が減少し、肯定的なコメントと否定的なコメントの比率は1対1.5だった」とも説明されている。在庫(49.2、前月46.7)は基準値を下回るものの改善した。また、供給(54.2、前月56.1、注1)はわずかに低下し、関税政策に伴う駆け込み需要がひと段落し、港湾の混雑状況がわずかながら改善されたことを示している。

一方で、新規受注(46.4、前月47.6)、雇用(45.0、前月46.8)はいずれも悪化している。特に、雇用に関しては、採用/人員削減比が1対3.2とISMが景況感調査を開始して以来最大の比率の1つになっており、製造業においては雇用環境が、これまでの「採用もレイオフも少ない状態」からさらに悪化しつつあることを示唆する内容となっている。

指数の構成要素以外では、仕入れ価格(69.7、前月69.4)は前月から再び上昇した。調査対象の18業種中15業種で価格上昇が報告されており、鉄鋼・アルミニウム関税や10%のベースライン関税が広く影響を及ぼしていることを示している。

「関税の混乱で、国内外で販売が完全に停止した。誰もが業務を停止し、受注は激減した」(一般機械)など、関税引き上げによるビジネスへの直接的な影響に加え、混乱の長期化による影響に言及するコメントが多くみられた。

なお、業種別では、景況感が拡大したと回答した業種は全体で9業種、縮小したと回答した業種は6業種だった(注2)。

(注1)50を上回ると供給スピードの遅延、50を下回ると改善を示す。供給スピードの遅延は商品の動きの多さを示すので、指数として景況の良さを表す。

(注2)拡大と回答した業種は、衣類・皮革、石油・石炭製品、非金属鉱物、その他製造業、家具、コンピュータ・電子機器、一般機械、食品・飲料・たばこ、電気機器。縮小と回答したのは、繊維、木材製品、紙製品、化学、輸送機器、金属加工。

(加藤翔一)

(米国)

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