米関税措置のシンガポール経済への影響、2025年下半期以降に減速の見通し

(シンガポール、米国)

シンガポール発

2025年07月15日

シンガポールのガン・キムヨン副首相兼貿易産業相は7月10日、米国関税措置の影響に関し、今後6~12カ月はシンガポール経済が減速するとの見通しを示した。同日に開催された米国関税措置に対応する政労使タスクフォース「シンガポール経済レジリエンスタスクフォース」(SERT)の会見で述べた。

ガン副首相は、シンガポールの企業が米国の関税措置の発動に備えて準備を進めており、一部の企業は相互関税の適用停止期間中に前倒しで、米国向け輸出を行ったと指摘した。その結果、「今年(2025年)上半期の国内経済は比較的堅調だった」と語った。また、国内の雇用市場も、現状は安定しているとの認識を示した。

シンガポールは米国の10%の基本関税の対象となっている。また、米国が輸入医薬品への関税導入を検討していることから、対米輸出の10%以上を医薬品が占めるシンガポールは米国と協議を進めている(2025年4月30日記事参照)。ガン副首相は7月後半にも訪米し、トランプ政権関係者や産業界の要人らと会談を行う予定だ。同副首相は「(会談を通じて)米国側の懸念や優先事項と関心についてより深く理解し、これまで相互利益を享受してきた2国関係をさらに強化したい」と述べた。

米国関税措置で影響受けた企業への新しい補助金導入へ

さらに、ガン副首相は同日の会見で、新たな補助金「事業適応支援金」を2025年10月までに導入すると発表した。支援金の対象となるのは、海外に輸出、および/または海外に事業拠点を持ち、今回の米国関税措置の影響を受けている企業となる。これら企業が自由貿易協定(FTA)や貿易コンプライアンス、法務や契約に関する外部専門家から助言を受ける際の費用、サプライチェーンや市場の多角化に関する相談費用を補助対象とする。このほか、国内外に製造拠点を持つ企業が物流ルートや保有在庫を調整する際の費用も補助を適用する予定だ。補助の対象期間は2年間。

(本田智津絵)

(シンガポール、米国)

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