国家歳入庁がワンストップ通関システムの利用を全面義務化、組織再編にも暫定政府の強い信念
(バングラデシュ)
ダッカ発
2025年07月07日
バングラデシュの国家歳入庁(NBR)は6月30日、輸出入貨物に対する証明書・ライセンス・許可証(CLP)の発行を担う全19の政府機関に対し、7月1日からバングラデシュ・シングル・ウインドー(BSW)システムの利用を義務付けると発表した。NBRは2025年1月2日に同システムの試験的な運用を開始し、2月1日から7の政府機関〔経済特区庁(BEZA)、輸出加工区庁(BEPZA)、輸出振興庁(EPB)、環境・森林・気候変動省環境局(DOE)、医薬品管理総局(DGDA)、爆薬局(DOEX)、化学兵器禁止条約国家庁(BNACWC)〕に利用を義務化していた。今回の動きは、義務化の対象を関連する全ての政府機関へ拡大するものだ。
BSWシステムは、輸出入者が通関に必要なCLPを申請する際に、政府機関との人為的なやり取りを排除し、輸出入手続きに要する時間とコストを削減することを目的としている。輸出入業者は、事業者識別番号を使ってBSWシステムに登録すれば、オンライン上で全ての必要書類を提出可能となる。NBRのプレスリリースによると、6月30日までに計38万9,015件のCLPがBSW経由で発行されており、85.97%が1時間以内、94.63%が1日以内に処理されているという。
バングラデシュ暫定政府は、行政改革の一環としてNBRの再編にも取り組んでいる。暫定政府は5月12日、国内資金局とNBRを再編し、税制を担う歳入政策局と歳入の徴収を担う歳入管理局を新設する法令を発表した。税収のGDP比率が、世界平均は16.6%であるのに対して約7.4%とアジア最低レベルにあり、利害の対立と非効率を助長する1つの機関が税制の立案と執行を兼ねる状況を見直す決断を下した。
NBR職員らは、再編が発表された直後から業務遂行を拒否する「ペンダウン・ストライキ」を行い、5月24日と25日に所得税・関税・付加価値税の徴収事務所を閉鎖する全国的なストライキに発展した(「デーリー・スター」紙5月22日、「ビジネス・スタンダード」紙5月25日)。暫定政府は5月25日、これに対応するため、7月31日まで法令の施行を停止したが、ストライキは6月下旬に再び発生し、進出日系企業の貿易取引などにも影響が出た。暫定政府は6月29日、NBRの全ての業務を「エッセンシャルサービス」と宣言し、ほかの公共の福祉に不可欠な業務と同様、ストライキや緊急事態の際にも継続しなければならない業務に指定した。暫定政府の強い対応やビジネス関係者による要請を受け、ストライキは終了したが、再編に対する職員の不満は根強く残っている。暫定政府による改革は障壁に直面しながら、少しずつ進展している。
(片岡一生)
(バングラデシュ)
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