インド政府、雇用連動型インセンティブ(ELI)スキームを承認

(インド)

ニューデリー発

2025年07月22日

インド政府は7月1日、雇用連動型インセンティブ(ELI:Employment Linked Incentive)スキームを閣議で承認外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。予算は9,944億6,000万ルピー(約1兆6,900億円、1ルピー=約1.7円)を計上する。本スキームは、特に製造業分野での雇用促進を重視しており、今後2年間で3,500万人の雇用創出をはじめとする若者の就業力強化、社会保障制度への加入を促す。

ELIスキームは、初めての就業者を対象としたパートAと、雇用者側を対象としたパートBで構成され、2025年8月1日~2027年7月31日の間の雇用が対象となる。

パートAでは、従業員積立基金機構(EPFO:Employees' Provident Fund Organization)に登録した月給10万ルピー以下の初めての就業者に対し、就業から6カ月後と12カ月後の2回に分割して、最大で給与の1カ月分(上限1万5,000ルピー)が支給される。支給は、インドの国民識別番号「アダール(Aadhaar)」と連携した政府による補助金支給システム「アダール決済ブリッジシステム(Aadhaar Payment Bridge System)」を通して行われる。なお、2回目の受給の前には金融リテラシー・プログラムの受講が必要となるほか、貯蓄の習慣づけのため、支給額の一部は一定期間、預金口座に保管され、後日引き出しが可能となる。

パートBは、雇用者側へのサポートで、月給10万ルピー以下の被雇用者を6カ月以上雇用することにより、その給与水準に応じて、新規従業員1人あたり月額最大3,000ルピーが2年間給付される。重点分野である製造業については、最長4年間の受給が認められる。ただし、被雇用者数が50人未満の企業は2人以上、50人以上の企業は5人以上の追加雇用が求められる。

同スキームは、2024年度(2024年4月~2025年3月)国家予算案(2024年7月31日記事参照)に盛り込まれた雇用政策の1つだ。インドでは、特に若年層の失業率の高さが近年、問題視されており、インド統計・計画実施省(MoSPI)によると、2025年6月の失業率は全体では5.6%である一方、30歳未満の若年層では15.3%だった。失業率の高さに対する国民の不満蓄積は、2024年4~6月のインド下院総選挙で現中央政権与党のインド人民党(BJP)が苦戦した一因とも分析されており(2024年6月7日記事参照)、今回のELIスキーム導入により、中央政府は若年層を中心とした雇用対策に本腰を入れて取り組み始めた。

(丸山春花)

(インド)

ビジネス短信 85da28ee6c3c831b