カナダ、与党・自由党の政策の柱「C-5法案」成立、国内の経済統合とインフラ改革
(カナダ)
トロント発
2025年07月07日
カナダで、ワン・カナダ・エコノミー法(One Canadian Economy)(通称C-5法案)が6月26日に成立した。同法は、「自由貿易および労働者移動法(the Free Trade and Labour Mobility in Canada Act)」と「カナダ建設法(The Building Canada Act)」で構成され、マーク・カーニー首相は「自由党政策の柱で、最も重要な経済イニシアチブ」と位置付けている。同法の主な内容は次のとおり。
(1)自由貿易の促進と州間障壁の撤廃
「自由貿易および労働者移動法」は、州や準州間の自由な取引と労働者の移動の促進を目指す内容。例えば、現状では酒類を他州に販売する場合、各州独自の専売公社との取引が必要なことやラベル表示など、複雑な流通規制が販売の障害となっていた。また、農産物も州境を越えて流通させる際には、連邦レベルでの許可証が求められるなど、国内の他州への販売が海外への輸出よりも困難との指摘がある。
同法の施行により、各州で認可された商品やサービスは、他州でも連邦基準を満たすものと見なされ、追加の手続きなしで流通が可能となる。
(2)労働力移動の円滑化
労働者の資格や認定についても、州や準州間で相互に承認するための枠組みがつくられる。例えば、オンタリオ州とアルバータ州では配管工の資格制度が異なり、州をまたいで働く際には再認定や追加試験が必要だった。今後はある州で取得した資格は他州でも有効とされることで。労働者の移動が円滑化され、労働市場の柔軟性が高まることが期待される。
カルガリー大学の経済学部教授兼公共政策大学院財政経済政策ディレクターのトレバー・トンベ氏によると、「カナダの各州・準州には、約600の専門資格認定機関が存在し、制度の違いが実質的にそれぞれの業界で障壁となっている」という。また、同氏は「カナダのGDPに占める州間貿易の割合が約3分の1にとどまっているのは、企業にとって州境を越えるよりも、海外との取引の方が容易であることを示している」と指摘する。連邦政府は「同等性」の判断基準を今後さらに明確化する方針で、企業や労働者向けガイドラインの発行を予定している。
(3)国家的インフラ整備の加速
「カナダ建設法」は、国家的インフラプロジェクトの承認期間を従来の5年から2年以内に短縮することを目的としており、対象には高速道路、鉄道、港湾、空港、石油パイプライン、重要鉱物、鉱山、原子力施設、送電網などが含まれる。今後、指定プロジェクトが選定され、建設業者が順守すべき条件をまとめた文書が公表される予定だ。また、同法では、特定の大臣(注)がプロジェクトの選定と条件の策定を担うことが定められている。
(注)現政権では、枢密院議長兼カナダ-米国貿易・州政府間関係相・ワン・カナダ経済担当相のドミニク・ルブラン氏とされている。
(井口まゆ子)
(カナダ)
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