遼寧省瀋陽市、北東アジアの国際化中心都市となるための10年アクションプランを発表

(中国)

大連発

2025年07月23日

中国の遼寧省瀋陽市政府は7月10日、「北東アジアの国際化中心都市の建設に関するアクションプラン(2025~2035年)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を公布した。同プランは、2024年10月に中国国務院が承認した「瀋陽市国土空間総合規画(2021-2035年)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で示された方針に基づき策定されたもので、今後10年間の瀋陽市の発展に向けた方向性を示している。発展を推進する分野は、自動車・部品、グリーンエネルギー、医療・健康、人工知能(AI)・ロボットなど多岐にわたっている。

同プランでは、瀋陽市が目指す位置づけとして、国際化現代総合ハブ、国家先進製造センター、東北現代サービス業センター、地域科学技術イノベーションセンター、地域文化センターの「1つのハブと4つのセンター」を目指すことを明確にした。

同プランでは上記の位置づけを獲得するための22項目の取り組みや目標を示した。概要は次のとおり。

  • 国際化現代総合ハブ:2035年までに、「国際総合交通ハブ都市」と「国家物流ハブ都市」の建設を完了する。日本・韓国・モンゴル・ロシアなどの諸国・地域の関連都市との開放水準を大幅に向上させ、「一帯一路」の質の高い建設における重要な拠点都市となる。
  • 国家先進製造センター:低空経済(注1)の先導区・集積区と集積回路産業の集積区を築き、新エネルギー産業を育成・発展させる。ロボット・スマート製造、航空、工作機械などの産業クラスターを加速的に世界水準へ引き上げる。AIの医療・健康、交通輸送などの重点分野との融合を加速し、AI応用シーンのモデル都市となる。
  • 東北現代サービス業センター:地域金融センターを建設し、サービス業の開放拡大のトライアルを推進する(注2)。流行の消費シーンを形成し、「首発経済」(注3)、「免税経済」(注4)、「夜間経済」(注5)などを発展させる。展示会、医療、教育などの公共サービスの質と国際化水準を全面的に向上させる。
  • 地域科学技術イノベーションセンター:2035年までに、ハイレベルのイノベーションプラットフォーム、高水準の研究型大学、科学研究機関、テクノロジーリーディング企業を生み出す。集積回路、AI、工作機械などの分野でコア技術のブレークスルーを実現し、国際的影響力のあるイノベーション成果を上げる。ガゼル企業、ユニコーン企業などを育成する(注6)。
  • 地域文化センター:2035年までに、文化・スポーツ・観光産業を国際化・高付加価値化し、特色を持たせ、国際文化観光地を目指す。国際友好都市を113都市に増加させ、国際社区(コミュニティー)を15カ所建設する。

(注1)低空経済とは、空飛ぶクルマやドローンなどの手段を用いて、低空飛行による乗客・貨物輸送を事業化し、社会変革をもたらす活動を指す。

(注2)「サービス業開放拡大総合試行事業」。同事業は、特定地域で市場参入規制の緩和や管理監督モデルの改革、市場環境の改善に取り組み、全国に普及できるノウハウを蓄積する目的で行われている事業。国務院が2015年5月に承認した「北京市でのサービス業開放拡大総合試行事業実施プラン」を基に北京市で開始後、対象地域が順次拡大され、現在は20の省・市で実施されている。瀋陽市は2022年12月に同事業の対象地域に追加された(2025年4月16日記事参照)。

(注3)首発経済とは、企業による新製品の発表、新業態・新モデル、新サービス、新技術の導入、店舗の開業などの経済活動の総称。これまでになかった新たな製品やブランドを出店することで、経済を振興させることを目的とする。

(注4)中国では、一部の地域で市内免税店(国務院の認可を受け、規定に基づいて市内に設置された、出国しようとする旅客に免税品を販売する店)が設立されているほか、外国人向けの増値税即時還付制度を全国で展開するとしている(2024年8月30日記事2025年4月16日記事参照)。

(注5)ナイトタイムエコノミー。屋台街など、夜間に行われる消費などの経済活動の総称を指す。

(注6)ユニコーン企業とは、企業評価額が10億ドル以上で設立10年以内の非上場企業を指す。ガゼル企業とは、今後3年以内に企業評価額10億ドルに相当するユニコーン企業になる可能性が高く、かつ高い成長力を有する非上場企業を指す。

(呉暁東)

(中国)

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