ADB、東南アジアの2025年経済成長率予測を4.2%に下方修正
(ASEAN、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)
調査部アジア大洋州課
2025年07月25日
アジア開発銀行(ADB)は7月23日、「アジア経済見通し2025年7月版」を公表し、東南アジア(注)の2025年の実質GDP成長率(経済成長率)について、前年比4.2%とする予測を発表した。世界経済の減速や貿易環境の不確実性の高まりを背景に、前回4月時点の予測である4.7%から0.5ポイント下方修正した(添付資料表参照)。2026年についても4月時点の4.7%から4.3%に予測を引き下げた。
ADBは、外部情勢の影響で企業景況感や消費者心理が落ち込み、東南アジアでの投資活動の妨げになっていると指摘。米国の追加関税措置発動前の駆け込み輸出の動きがみられたものの、特に外需依存度の高い国では、第1四半期の成長が減速する兆しを見せたと分析した。また、今後2年間はインドネシアを除く東南アジアの国々では、成長の減速傾向が続くとの見通しを示した。
今回発表された東南アジア主要6カ国の2025年および2026年の経済成長率予測は次のとおり。
- インドネシア:2025年は5.0%、2026年は5.1%。貿易黒字が縮小傾向だったものの、国内消費が成長を牽引し、いずれも4月の予測値から修正はなく、6カ国中で唯一横ばいだった。
- マレーシア:2025年は4.3%、2026年は4.2%。世界情勢の不透明感によって貿易と投資の見通しが悪化し、4月時点からいずれも0.6ポイント下方修正された。
- フィリピン:2025年は5.6%、2026年は5.8%。外部情勢の影響を受け、それぞれ0.4ポイント、0.3ポイント下方修正された。金融政策の緩和、インフレの解消などで国内需要は好調で、6カ国のうちベトナムに次いで2番目に高い成長予測となった。
- シンガポール:2025年は1.6%、2026年は1.5%。それぞれ1.0ポイント、0.9ポイント下方修正された。輸出が牽引し、2025年第1四半期の成長率は前年同期比3.9%だったが、5月ごろに米国関税措置発動前の駆け込み輸出が一服し、今後、外需減速が見込まれることなどが影響した。
- タイ:2025年は1.8%、2026年は1.6%。それぞれ1.0ポイント、1.3ポイント下方修正された。世界情勢の不確実性の高まりに加え、訪問外客数の減少や不安定な国内政治情勢も懸念材料となっている。
- ベトナム:2025年は6.3%、2026年は6.0%。それぞれ0.3ポイント、0.5ポイント下方修正された。7月上旬に米国との貿易交渉が妥結したが、今後は米国関税で輸出が落ち込むことが想定される。他方、2025年上半期は外国直接投資が認可額、実行額ともに好調で、成長予測は6カ国中で最も高く、唯一6%台を維持した。
(注)ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、東ティモール、ベトナムを含む地域を指す。
(菊池芙美子)
(ASEAN、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)
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