アフリカ最大級のコンテンツ見本市、日本をはじめ世界的著名人が経験を共有

(コートジボワール、アフリカ、日本)

アビジャン発

2025年07月09日

アフリカ最大級のコンテンツ見本市「オーディオビジュアル・コンテンツの国際会議(SICA 2025)」が626日から3日間、アビジャンで開催された(2025年7月9日記事参照)。3回目となるSICAでは、世界的に著名なエキスパートの参加が大きな注目を集めた。

日本からは、コートジボワール通信省の特別ゲストとして招聘(しょうへい)された日本最大手デジタルアニメーションスタジオであるポリゴン・ピクチュアズの塩田周三代表取締役が、開会式の基調講演に登壇した。日本のアニメーションの発展の歴史や現状、独自のクリエーティブ手法や世界で注目を集めるようになった要因について説明した。「日本は、ビデオゲーム、漫画、アニメ、玩具に至るまで、圧倒的な存在感を示している。日本のアニメには、日本の長い歴史、独自の文化や風習、豊かな自然やそれに対する日本人の感性が物語に織り込まれ、それが醸し出す独特な世界観が人々を魅了する」と語った。また塩田氏は、審査員の1人を務めたTHU(注)とソニーのコラボによるグローバルチャレンジ「Sony Talent League by THU」の2023年度グランプリチームに、コートジボワールの「Djossi225」が世界の作品の中から選ばれたことに触れ、「コートジボワールの若いクリエーターたちの可能性に注目しており、将来性を感じている」とコメントし、アニメ産業を振興していく上で人材育成の重要性を指摘した。

写真 塩田氏の基調講演(ジェトロ撮影)

塩田氏の基調講演(ジェトロ撮影)

同じく特別ゲストのゲーム大手バンダイナムコスタジオの原田勝弘エグゼクティブゲームディレクター兼チーフプロデューサーは、「eスポーツ」特別イベントに登壇した。eスポーツの世界市場規模は、2025年25億ドル(推定)から2035年188億5,000万ドルにまで増加する見通しだという。

自身がプロデュースした3D対戦格闘ゲーム「鉄拳(TEKKEN)」を例に、アフリカのeスポーツ需要について分析した。同シリーズの世界累計販売本数は5,900万本を超えるという。アフリカ各国の「TEKKEN」月間アクティブユーザー(MAU)の割合を比較し、コートジボワールが南アフリカ共和国に次いで2位となっていることに注目していると述べた。同国は、特に質の高いインフラを有していないにもかかわらず、高いMAUを記録​しているが、これは単に「人口が多いからプレーされている」のではなく、国全体のゲーム文化の根付きとプレーヤーの熱意が背景にあり、潜在市場の強さを表しているという。

また、「コートジボワールは世界レベルの強豪プレーヤーを輩出している」​と述べた。アフリカ市場の将来性については、若年人口の多さ​、スマホ普及率とゲーミングPC(パソコン)普及率の上昇​、競争が少ないブルーオーシャン市場などの要因を挙げ、確実に伸びる有望な市場とみており、「ネット環境などインフラ整備の進展や教育・人材育成の向上とともに、今後のeスポーツ産業の促進が期待される。雇用創出、海外進出の可能性、教育・ICT(情報通信技術)リテラシーの向上、観光・地域プロモーションなどeスポーツがもたらす効果は大きいだろう」とコメントした。

写真 原田氏の特別セッション「eスポーツ」登壇(ジェトロ撮影)

原田氏の特別セッション「eスポーツ」登壇(ジェトロ撮影)

両氏の講演は、アフリカ域内をはじめ来場した多くのクリエーターや業界関係者に対し、グローバル市場での活躍に向けヒントを提供した。

6月28日の「なぜコートジボワールで制作するのか」をテーマとするパネスディスカッションでは、塩田氏と並んで、ジャン=パスカル・ザディ氏(フランス・コートジボワールの映画監督、俳優、プロデューサー)、ラリー・カサノフ氏(米国Threshold Entertainment CEO、対戦型格闘ゲーム「モータルコンバット(Mortal Kombat)」製作総監督)、アレックス・バーガー氏(フランス・米国でのメディア分野のテレビ・映画プロデューサー/当日のパネルはビデオ出演)ら著名人が登壇し、それぞれの経験を踏まえてコートジボワールでの可能性や期待を語った。

写真 塩田氏のパネルディスカッションの様子。左からチリフォ氏(司会者)、ザディ氏、塩田氏、カサノフ氏、ギルス氏(ベルギーの映画プロデューサー・監督)(ジェトロ撮影)

塩田氏のパネルディスカッションの様子。左からチリフォ氏(司会者)、ザディ氏、塩田氏、カサノフ氏、ギルス氏(ベルギーの映画プロデューサー・監督)(ジェトロ撮影)

(注)「Trojan Horse Was Unicorn(和名:トロイの木馬はユニコーンだった)」は、ポルトガル発のクリエーティブコミュニティー。通称THU。2013年に設立された、テクノロジー、アート、クリエーティビティに焦点を当てて、デジタルエンタテインメントにおける業界の垣根を越えた世界中のクリエーターがつながり合うネットワーク・エコシステム。

(長屋幸一郎、藤本海香子、渡辺久美子)

(コートジボワール、アフリカ、日本)

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