英政府、通商戦略公表、国内企業の輸出支援と保護を加速

(英国)

ロンドン発

2025年07月01日

英国政府は6月26日、通商戦略を公表した(英国政府ウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同戦略は、政権与党の労働党が2024年7月の総選挙の公約として掲げていたもので、通商政策を通じ、英国企業の機会拡大、経済成長の実現を図る。政府は同戦略の発表に合わせて、国際通商見通しPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)も発表している。

同戦略に盛り込んだ主な施策は次のとおり。

  • 不公正な貿易慣行に対する権限の拡大に向けた法制を検討。意図的な経済的威圧に対しても新たな権限を検討。
  • 貿易救済制度の改革を実施。貿易救済庁(TRA)の政策ガイダンスと運営枠組みを調整。
  • 国際的な産業動向やサプライチェーンの混乱のモニタリングと対応を実施。ビジネス・通商省内に経済安全保障アドバイザリーサービスを新設し、企業と連携。
  • リカード基金を創設し、規制当局を支援。優先市場で国内企業が直面する規制障壁の撤廃を図る。
  • 英国輸出信用保証局(UKEF)の支援能力を200億ポンド(約3兆9,400円、1ポンド=約197円)拡大(2025年4月15日記事参照)。小規模企業向けの輸出保険(Small Export Builder)を新たに導入するほか、認定された英国企業から繰り返し調達を行う外国企業を対象に、手続きを簡素化(Repeat Order Guarantee)。
  • 輸出支援サービスを改善。ガイダンスを明確化し、企業のアクセスを向上。2025年中に、中小企業向けの輸出支援サービスを新設する企業成長サービス(Business Growth Service)に一本化。
  • 企業と政府の間でEU規制に関する対話を定期的に実施、制度変更への対応を支援。
  • 主要な欧州市場と連携し、「デジタル貿易回廊」を設立、企業間の電子貿易書類の活用支援に向け、通じ施策を検討。
  • 国内で活動する企業のサプライチェーンに焦点を当て、責任ある企業行動に対するアプローチを見直し。
  • 多国間システムが直面する課題の解決に向け、将来の複数国間(プルリ)合意に向けたアジェンダの交渉と合意に、パートナーや同盟国と連携して取り組む。
  • 多数国間暫定上訴仲裁アレンジメント(MPIA : Multi-party Interim Appeal Arbitration Arrangement、2024年9月5日付地域・分析レポート記事参照)に参加。

同戦略の発表に関連し、TRAは現行の鉄鋼セーフガード措置が2026年6月に期限を迎えることを踏まえ、今後の措置の検討に向けて意見公募を開始している(英国政府ウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(山田恭之)

(英国)

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