アフリカ最大級のコンテンツ見本市に日本企業8社が参加
(コートジボワール、アフリカ、日本)
アビジャン発
2025年07月09日
コートジボワールの最大都市アビジャンで6月26~28日、第3回オーディオビジュアル・コンテンツ国際会議「SICA 2025」が開催された。アフリカ内外25カ国から政府関係者、クリエーター、アニメーター、配信メディア、プロバイダー、投資家など約300人の業界関係者、日本企業を含む約100人の講演者、2,000人を超えるとみられる参加者が一堂に会し、持続可能で競争力のあるコンテンツ産業の実現に向けて議論した。ジェトロはこの機会に、フランス語圏アフリカコンテンツ産業ミッションを実施した。
「SICA 2025」開催に際し、コートジボワールのアマドゥ・クリバリ通信相兼政府報道官は、「SICAは、アフリカの才能開発とともにコートジボワールにおけるコンテンツ業界の地位向上を目指すプラットフォームだ。このツールを通じて、技術革新や日々進化する世界の新しいパラダイムに柔軟に対応できる強靭(きょうじん)なエコシステムの構築を目指していく」と意欲を表明した。
開会式の様子(ジェトロ撮影)
ジェトロが日本企業8社を取りまとめて参加した展示会場では、ネットワーキングや商談が行われ、ビジネス機会の拡大、潜在的な顧客やパートナーの発掘、コンテンツ産業動向の把握などビジネス交流の機会となった。
アフリカ企業とビジネス交流(左)、ジェトロのブースで活発に意見交換(右)(ともにジェトロ撮影)
日本企業ミッション団は、SICAプログラムの合間を利用して、アニメーション制作の教育プログラムやeスポーツ大会を通じて若者のデジタルスキルを育む、次世代コンテンツ産業支援施設を視察した。 フランスの通信大手「オランジュ(Orange)」グループがアビジャンで運営する「オランジュ・データセンター」では、3DアニメーションやVFX(Visual Effects、視覚効果)の専門教育をアフリカの若者向けに提供するトレーニングプログラムが実施されている。同プログラムを提供するAfro VFXの共同創業者デディ・ビラムバ氏は、「アフロフューチャリズム(注)」とアニメスタイルを組み合わせた新しいストーリー作りや、日本のノウハウを活用したアニメ制作専門学校の設立など、特に映像制作や人材交流の面において日本との連携可能性を示唆した。
また日本企業は、アミューズメント大手のパラダイスゲームが運営するコートジボワール最大規模のゲームセンターを視察。この施設ではプロ・アマ問わずeスポーツ大会が開催されており、ゲーム大手バンダイナムコスタジオの原田勝弘エグゼクティブゲームディレクター兼チーフプロデューサー がプロデュースしている、ビデオゲーム「鉄拳(TEKKEN)」のワールドツアートーナメントの公式大会がアフリカ大陸で初めて開催された。訪問時、原田氏は現地ファンコミュニティーから熱烈な歓迎を受け、コートジボワールのeスポーツ産業が発展するにはどうすればよいか、など多数の質問が投げかけられた。
鉄拳ファンが施設内の最新ゲーム機で遊ぶ様子(左)、ゲームセンターに集まった現地コミュニティ(右)(ともにジェトロ撮影)
ジェトロが主催したネットワーキングランチでは、コートジボワールのクリバリ通信相、フランソワーズ・ルマルク文化・仏語圏相、胡摩窪淳志駐コートジボワール日本大使を来賓に迎え、日本企業はアフリカ内外企業と和やかな雰囲気で対話、交流を深めた。冒頭、あいさつに立った長屋幸一郎ジェトロ・アビジャン事務所長は、参加者への歓迎と感謝の意を示すとともに、日本企業のSICAへの参加はアフリカにおけるオーディオビジュアル産業の発展に向けたコミットメントを示すものであり、ジェトロはこのプロジェクトの成功に向けて邁進(まいしん)していくと述べた。またクリバリ氏は、日本のミッション実施を歓迎し、コンテンツ産業振興に向けた両国間の協力促進を称賛した。
ネットワーキングランチでの長屋ジェトロ・アビジャン所長のあいさつ(ジェトロ撮影)
(注)アフリカの文化や歴史、アイデンティティを未来的な視点で再解釈し、芸術や科学技術、哲学を融合させる文化的・思想的なムーブメント。マーベルの「ブラックパンサー」は、アフリカの伝統と未来技術が融合した架空の国「ワカンダ」を描くアフロフューチャリズムの代表例。
(長屋幸一郎、藤本海香子、渡辺久美子)
(コートジボワール、アフリカ、日本)
ビジネス短信 6de804d79c5a47aa