米中通商協議、90日間の関税停止延長を協議、米国側はトランプ大統領が最終判断
(米国、中国)
ニューヨーク発
2025年07月31日
米国のスコット・ベッセント財務長官およびジェミソン・グリア通商代表部(USTR)代表は7月28~29日、スウェーデン・ストックホルムで中国の何立峰副首相(中国共産党中央政治局委員)と通商協議を実施した。両国の関税措置の適用停止期限の延期に関して、米国側は最終的にはドナルド・トランプ大統領の判断によると説明しており、90日間の延期で合意したとする中国側の発表とやや異なっている(2025年7月30日記事参照)。
協議後の記者会見(注1)でベッセント長官は、「協議はとても建設的なものだった」と評価した。両国は、相互に適用を停止している関税措置の90日間の延期に関して協議した。ただし、ベッセント長官は「まだ何も合意されていない」と述べ、トランプ氏が関税措置の適用停止期限の延期の可否を最終判断すると説明した。トランプ氏が延期を承認しなかった場合、米国の中国に対する関税措置は適用停止前の水準に戻ると説明した。
第2次トランプ政権発足以降、米国は中国に最大145%の追加関税を課した。中国も米国に最大125%の報復関税を課した。両国は5月にスイス・ジュネーブで実施した協議で、相互に賦課した関税措置を停止・廃止し、協議を継続することなどで合意した。両国の関税措置の適用停止期限は、ジュネーブ合意の90日後の8月12日に設定されていた(2025年5月13日記事参照)。今回の協議の結果、さらに期限が90日間延期されれば、新たな期限は11月10日となる。
一方で、トランプ氏が延期を承認しなかった場合、第2次トランプ政権発足以降に発動された米国の対中追加関税は、8月12日に現在の30%から54%に引き上げられる見込みだ(注2)。
ベッセント長官とグリア代表の会見での発言によれば、両国は関税措置のほか、中国の希土類(レアアース)の輸出管理措置についても協議した。さらに米国は、中国の過剰生産能力、中国によるイラン産石油の輸入、中国のロシアに向けた軍民両用(デュアルユース)技術の輸出に関しても懸念を表明した。
ベッセント長官は会見で、「繰り返し中国に伝えてきたとおり、われわれはデカップリングを望んでいない。レアアース、半導体、医薬品などの特定の戦略的産業におけるデリスキングの必要があるだけだ」と述べ、中国との貿易関係の全面的な対立を企図していないとの考えを示した。
(注1)会見内容は、ブルームバーグ・テレビジョンの配信映像(7月29日)に基づく。
(注2)第2次トランプ政権発足以降、米国は中国に対し、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、違法薬物の流入防止を目的とした20%の追加関税、10%のベースライン関税を適用している。また、8月12日まで34%の相互関税の適用を延期している。仮にトランプ氏が延期を承認しなかった場合、8月12日以降に10%のベースライン関税が34%の相互関税に置き換わる。なお、これらに加えて、第1次トランプ政権下で発動した1974年通商法301条に基づく追加関税(2024年12月12日記事参照)なども品目によっては課される。
(葛西泰介)
(米国、中国)
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