アルゼンチン政府、拡大信用供与措置の初回レビューでIMFとスタッフレベル合意
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2025年07月29日
IMFは7月25日、アルゼンチンに対する拡大信用供与措置(EFF)による支援の初回レビューについて、スタッフレベルで合意に達したと発表した。7月末に予定されている審議を通じ、IMF理事会が承認すれば、アルゼンチン政府はIMFから約20億ドルの融資金の支払いを受けることができる。
IMFは発表で、ミレイ政権の財政赤字ゼロの厳格な財政政策だけでなく、4月にIMFが支払った約120億ドルの融資による潤沢な外貨流動性を背景に、為替バンド制への移行と対ドル為替レートの安定、幾つかの資本取引規制の解除を円滑に進めたことを高く評価した。マクロ経済指標についても、インフレ率の伸びの減速、貧困率の低下、経済成長の継続を評価した。最近のアルゼンチン政府の取り組みの中でも、ドルで直接購入できるペソ建ての「BONTE2030債」を国外の投資家を対象に発行し、2020年の民間債務の再編以来、約5年ぶりに国際資本市場から資金を調達することに成功したことを特に評価した。今後も財政均衡維持、インフレの持続的抑制、外貨準備高の蓄積を進めることで合意したとしている。
アルゼンチン政府とIMFが合意したパフォーマンス目標の達成状況では、7月28日付の現地紙「エル・クロニスタ」によると、外貨準備高の蓄積が目標に達していないとされている。中央銀行は、為替レートが為替バンドの下限を超えた時にドル買い介入する方針を示しているが、同紙は、「選挙年は(資産価値防衛のため)資産のドル化が進む傾向があるほか、下半期は農作物の収穫期が終わり、外貨流入が減少するため、政府は外貨準備高蓄積の目標達成時期を後ろ倒しにすることでIMFと合意し、10月の選挙後に外貨準備高の蓄積を加速させるだろう」との識者の見方を伝えている。
中銀の7月25日の発表によると、大豆など穀物の輸出税の一時的な引き下げが6月末日を期限としていたことを受けて、輸出代金の前受け額が急増したことを主因に、6月の月次経常収支は2024年5月以来の黒字となった。一方、個人による外貨購入が解禁された4月以降、個人の外貨購入が急増しており、外貨への需要は根強い。2025年後半の選挙を見据えた政府のかじ取りに注目が集まる。
(西澤裕介)
(アルゼンチン)
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