米フロリダ州ジャクソンビル市、自動運転車による米国初の公共交通サービスを開始
(米国)
アトランタ発
2025年07月08日
米国フロリダ州ジャクソンビル市のジャクソンビル交通局(JTA)は6月27日、自動運転車(AV)を用いた米国初の公共交通サービス「ネイバーフッド・オートノマス・ビークル・イノベーション(NAVI)」の運用開始を祝う式典を開催した。同サービスは、同市ダウンタウンで6月30日から開始した。
NAVIは、市の交通システムにAVを導入するプログラム「アルティメット・アーバン・サーキュレーター(U²C)」のフェーズ1「ベイストリート・イノベーション・コリドー(BSIC)」プロジェクトとして実施される(注1)。同市ダウンタウンのパール・ストリートからエバーバンク・スタジアムまで続く3.5マイル(約5.6キロメートル)のベイストリート・イノベーション・コリドー沿いを平日午前7時~午後7時に運行する。同コリドーは、住宅街からビジネス街を経てスポーツ・エンターテインメント地区までを結ぶ重要な幹線道路となっている。12カ所の停留所を設け、観光スポットへのアクセスを向上させる。
2025年9月30日までの3カ月間は無料で運行する。乗客は乗車後に簡単なアンケートへの協力を求められる。1年目は係員が同乗し、乗客からの質問対応や安心して乗車できる環境の提供に努めるという。また、ルート走行を通じて周辺環境の学習を重ねていく。2年目までに係員が同乗しない真のレベル4(注2)自動運転の実現を目指す。
NAVIの車両には、バイ・アメリカン法(BAA)と連邦自動車安全基準(FMVSS)に準拠するため、当初は、自動運転ソフトウエアを開発する英国オックスフォード大学発スタートアップのオクサ(米国本社:フロリダ州オーランド)の自動運転システム(ADS)を搭載したフォードの特注仕様E-トランジット14台を使用する。乗客最大9人を収容可能で、米国障がい者法(ADA)に対応した機能を備える。ドイツのホロンがジャクソンビルで製造予定の自動運転シャトルも利用可能になり次第、2027年にも導入予定だ(注3)。NAVIの運行・保守は、自動運転のモビリティーサービスを提供するスタートアップのビープ(本社:フロリダ州オーランド)が5年間の運行・保守(O&M)契約に基づき手掛ける。
JTAのナット・フォード最高経営責任者(CEO)は「ジャクソンビルは、公共交通機関として初の有償AV交通サービスを全面導入することで、フロリダ州そして全米に新たな歴史を刻んでいる」「シェアードモビリティは、自立性を最大限に高め、アクセシビリティを向上させることで、交通課題の解決とコミュニティ構築に貢献する」と語った。
(注1)U²Cは今後10年間で、フェーズ2で1989年に開通した自動運転モノレール「ジャクソンビル・スカイウェイ」の上部構造物と8つの駅をAV用高架道路に転換することを、フェーズ3で地上でのAVサービスをBSICから周辺地区へ拡張することを計画している。
(注2)自動車技術者協会(SAE)が定義する自動運転のレベル。レベル4では、限定された領域内で加速・操舵(そうだ)・制動を全てシステムが行い、ドライバーが全く関与しない状態での走行が可能。
(注3)ドイツ系自動車部品メーカー、ベントラー・グループの子会社で自動運転シャトル製造のホロンは2024年9月、1億ドルを投じてジャクソンビルに自動運転シャトル製造工場を建設することを発表した。2026年完工の予定。
(横山華子)
(米国)
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