政府系投資会社テマセクの純資産総額が過去最高、インフラとAI投資を加速
(シンガポール)
シンガポール発
2025年07月11日
シンガポールの政府系投資会社テマセク・ホールディングスは7月9日、2025年3月期の年次報告書で、同社の投資ポートフォリオの純資産総額が4,340億シンガポール・ドル(約49兆4,760億円、Sドル、1Sドル=約114円)となり、過去最高を記録したと発表した。テマセクは今後、データセンターや持続可能なエネルギーなどのインフラ分野、人工知能(AI)分野への投資を加速する方針を示した。
テマセクの純資産総額は前期比で450億Sドル増加した。この理由について、同社は発表の中で「主に地場の上場企業の業績と、中国、米国、インドへの投資が堅調だった」と説明した。ポートフォリオに含まれる同上場企業には、国内最大手銀行DBSや最大手通信会社のシンガポール・テレコムなどがある。株主総利回り(TSR)は10年間で5%、20年間で7%となり、いずれもほぼ前期並みだった。
テマセクは今後の世界経済の見通しとして、「地政学上の緊張が引き続き主要なリスクであり、成長を鈍化させる」と指摘した。同社は、今後も米国を主要な投資先とする一方で、欧州、中国、インドを中心にグローバルに投資先を分散する方針を維持する。テマセクの投資ポートフォリオに占める地域別割合をみると、北米・南米は2021年3月期の20%から、2025年3月期に24%へと拡大した。一方、中国は同時期に27%から18%へと縮小した。なお、シンガポール国内は24%から27%へと拡大した。
同社は2025年のシンガポール経済について、特に米国の関税政策など世界の政策の不確実性の影響を一部受けるとの見方を示した。ただし、「より厳しい成長環境に直面しても、十分な財政および金融政策の手段がある」と指摘した。また、米国については、「強固なビジネスの基盤、成熟した資本市場、活発なイノベーション文化があり、今後も最大の投資先となる」とした。
テマセクやGIC(注)、シンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)の投資運用による長期投資益見込みの最大50%(純投資リターン:NIR)は、政府の一般会計の歳入に組み込まれる。
(注)テマセクとGICはともに財務省管轄下の投資会社。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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