日米イノベーションアワード2025開催、ディープテック領域で日本発スタートアップの存在感
(米国、日本)
サンフランシスコ発
2025年07月23日
日米のスタートアップを表彰する「第15回日米イノベーションアワード」が7月17日、米国カリフォルニア州のスタンフォード大学で開催された。同大学米国アジア技術経営センター(US-ATMC)と北カリフォルニア・ジャパンソサエティ(JSNC)の共催で、同アワードは節目の15周年、JSNCは創立120周年を迎え、300人以上が来場した。
午前の「イノベーション・ショーケース」では、日本発のスタートアップ5社が登壇し、そのうち3社がディープテック分野で存在感を示した。アルファ・フュージョンは既存の放射線治療や化学療法では効果が得がたい転移がんや難治性がんを対象に、放射性同位元素アスタチンを用いた治療技術を紹介した。ジョーシスは、SaaS(注)やIT資産を一元管理できるIT運用プラットフォームを提供し、企業のIT効率化とセキュリティー管理を支援するサービスを紹介した。
(左写真)会場の様子、(右写真)スタンフォード大のヘネシー名誉学長(左)とダッシャー教授(右)のパネル(ともにジェトロ撮影)
ナノQT(ナノファイバー・クオンタム・テクノロジーズ)は将来の量子コンピュータ市場を見据え、量子演算ユニット(QPU)のネットワーク化、モジュール化に不可欠な超低損失ナノファイバーキャビティーの開発を紹介した。ポケトークは多言語翻訳デバイスとして、米国での売り上げが日本を上回ることや、小売企業、公的機関や教育機関など多様な現場で導入が進んでいることを報告した。翻訳データを保存、学習に使用しない設計により、プライバシー面でも安心して使える点を強調した。シンカーは近接覚センサーを用いたロボットアームで、不定形な混在物の自動ピッキングを実現し、赤外線とエッジ人工知能(AI)による高精度な認識などにより、高難度のピッキングが可能な技術を紹介した。
(左)シンカーのブース、(中)展示場の様子、(右)ジェトロのブース(いずれもジェトロ撮影)
イノベーション・ショーケース後は、AIと日米協力における第2次トランプ政権の影響をテーマとした特別パネルセッションが非公開形式で行われた。
午後は「サンブリッジ新興リーダー賞」授与が行われ、米国からウェイモのエンジニアリング担当副社長のミズキ・マクグラス氏、日本からチームラボ採用チームリーダーの山田剛史氏が受賞した。
クロージングパネルでは、スタンフォード大学名誉学長でアルファベット会長のジョン・L・ヘネシー氏、US-ATMC所長のリチャード・ダッシャー教授が登壇した。半導体産業での日本との協働とイノベーションについて、ヘネシー氏は信頼できるパートナー国とのサプライチェーンのフレンドショアリング化の必要性を強調し、ダッシャー氏も日本との人材、技術交流を通じた信頼構築の継続を訴えた。
(注)Software as a Service。インターネットを通じて提供されるソフトウエアを利用者がサービスとして使う形態のビジネス。
(松井美樹)
(米国、日本)
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