英・ドイツ両首相、2国間関係強化のケンジントン協定に署名
(ドイツ、英国)
ベルリン発
2025年07月29日
ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は7月17日、訪問先のロンドンで、英国のキア・スターマー首相と「ケンジントン協定」(注)に署名した(ドイツ連邦首相府プレスリリース
、ドイツ語)。批准を要して法的拘束力を持つ2国間条約で、両国の協力関係を深め、安全保障、防衛、経済、教育など多岐にわたる分野で連携強化を図ることを目的としている。メルツ首相は同協定署名を「歴史的な日」と評し、英国のEU離脱(ブレグジット)後も両国が今後さらに緊密に協力していくことを約束した。スターマー首相は両国の新たな協力関係を歓迎し、NATOとも連携した2国間の相互防衛の強化を明言した。その発言を受けて、メルツ首相はさらに、英国とフランス、ドイツが欧州の安全保障、移民政策、経済政策で連携していると語り、3国間の緊密な協力関係を強調した。
協定の前文では、両国が直面する地政学的な変化やロシアの脅威に言及し、民主主義・自由・人権・法の支配を守りながら、地球環境の保全を含め、繁栄と安全を確保するために協力を深めることの重要性に触れ、多方面の協力を協定として明文化している。
協定の主な内容は次のとおり。
- 安全保障と軍事協力:NATOの枠組みに加えて、2国間でも相互防衛を約束し、軍事的支援を含む協力を明記した。また、核問題や情報分野でも継続的な対話を行い、欧州の安全保障で主導的役割を果たす姿勢を示している。さらに、重要インフラの保護やサイバーセキュリティー分野での連携も強化し、ハイブリッド脅威への対応に取り組むことも約束している。
- 経済・インフラ協力:貿易・投資関係を通じた相互成長の重要性を確認し、経済成長促進と競争力強化のために、貿易・投資、産業などさまざまな分野での協力を約束した。
- 教育・人的交流:科学・技術・イノベーション、教育が両国の共同の安全保障や持続可能な経済成長と繁栄に貢献する重要な役割を果たすとして、両国民、特に青少年の交流促進支援や文化的交流の発展なども目指す。
- 協力形態:2年ごとに政府首脳による閣僚級協議を開催。
(注)協定はロンドンのケンジントン地区にあるビクトリア・アンド・アルバート博物館で署名されたことから、「ケンジントン協定」と称されている。英国のビクトリア女王とドイツ出身のアルバート公の名前を冠する同博物館は、両国関係を象徴する場所として選ばれた。協定の正式名称は「ドイツ連邦共和国とグレートブリテンおよび北アイルランド連合王国との間の友好および2国間協力に関する条約」。
(打越花子)
(ドイツ、英国)
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