第58回ASEAN外相会議の共同コミュニケ発表、ATIGA改定交渉の妥結を歓迎

(ASEAN、マレーシア、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、東ティモール)

ジャカルタ発

2025年07月17日

ASEAN事務局(本部:インドネシア・ジャカルタ)は7月11日、マレーシア・クアラルンプールで7月9日に開催された第58回ASEAN外相会議の共同コミュニケを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

ASEAN経済共同体(AEC)に関する声明において、世界的な貿易摩擦の高まりと、国際経済情勢における不確実性に言及した上で、「特に関税に関する一方的な措置に懸念を表明する」とした(注1)。また、WTOを中核とするルールに基づく多国間貿易システムの重要性を強調した。さらに、4月のASEAN特別経済大臣会合で設立が合意された「ASEAN地経学タスクフォース」(注2)は、予備的な提言として、(1)地域経済統合の深化、(2)地域的な包括的経済連携(RCEP)協定などの貿易協定の完全な実施、(3)ASEANの中心性を生かした新たな経済秩序の形成、の3点を提示した。

貿易分野では、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)改定交渉の妥結を歓迎し、2025年10月に予定されている第47回ASEAN首脳会合に合わせて、第二次改定議定書への署名が行われることに期待を示した。また、ASEAN中国自由貿易協定(ACFTA)3.0の妥結、ASEANインド物品貿易協定(AITIGA)の2025年中の実質妥結に向けた進捗、2025年4月21日のASEANニュージーランド・オーストラリアFTA(AANZFTA)第二次修正議定書の発効などを歓迎するとともに、2026年中のASEAN韓国自由貿易協定(AKFTA)の改定交渉開始に期待を示した。

金融・デジタル分野では、複数国間でクロスボーダー決済の相互接続を実現するための多国間決済接続構想「プロジェクト・ネクサス」に関して、「ASEAN域内および日本、インド、香港などの経済パートナーとの間で、18の国境を越えた決済接続を実現する」と明記した。また、交渉中のASEANデジタル経済枠組み協定(DEFA)の2025年内の実質妥結への期待が示された。

(注1)米国のドナルド・トランプ大統領が2025年4月に表明した「相互関税」に関する交渉について、ASEAN加盟国のうち、ベトナムは7月2日に合意(2025年7月3日記事参照)、インドネシアは7月16日に交渉妥結をそれぞれ発表している。

(注2)ASEAN地経学タスクフォースは、「AEC戦略計画2026-2030」を補足する「ASEAN統合報告書」を2025年9月に発表する予定(6月12日付、ベルナマ通信)。

(大滝泰史)

(ASEAN、マレーシア、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、ラオス、東ティモール)

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