ブラジルと中国の鉄道建設可能性調査合意にペルー政府が警戒感

(ペルー、ブラジル、中国)

リマ発

2025年07月17日

ブラジル運輸省傘下のエンジニアリング調査会社インフラ(INFRA)と中国国家鉄路集団(CR)は、7月7日にブラジルと太平洋側を結ぶ鉄道建設の可能性調査を実施することで合意した。5年かけてブラジル国内で建設した場合の経済性などの調査を行うものとされている。

鉄道が太平洋側に接するためにはペルーの領土に入る可能性があるため、ペルー側では警戒感が強まっている。エドゥアルド・アラナ首相は7月9日、地元プレスに対し、「もし鉄道がペルーの領土に入り、ペルー政府が投資することになった場合、そのコストは100億ドル前後になる。到底受け入れられる案件ではない。もし、ブラジル政府がペルー側への敷設も希望しブラジル政府が自ら投資をするのであれば、それをわれわれに伝えるべきだ。もし民間の投資プロジェクトであれば、運輸通信省(MTC)で審査を行う」と述べた。

ペルー政府が鉄道敷設への投資に積極的ではない理由は、コスト負担に加え貿易構造にもある。通商観光省(MINCETUR)によると、2024年のペルーからブラジルへの輸出額16億4,200万ドルに対し、ブラジルからペルーへの輸入額は32億8,800万ドルだった。ブラジル向け輸出額はペルーの輸出額全体のわずか2.2%で、貿易赤字の構造が長年続いている。ペルーからブラジルへの主な輸出品目は銅カソード、ナフタ、石油などの資源エネルギーで、ブラジルからはディーゼル車、バス、自動車などを輸入している。

ペルー政府は雇用創出に寄与する農産物や繊維製品などの輸出促進を重視しているが、鉄道がペルーからブラジルまで接続しても重要産品の輸出増にはつながらないとみられている。

(石田達也)

(ペルー、ブラジル、中国)

ビジネス短信 33d98c0a7f152a1f