自動車生産は上半期で200万台突破も、業界団体は今後の動向を警戒
(メキシコ)
メキシコ発
2025年07月22日
メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)が7月7日に発表した自動車統計(大型バス・トラックを除く)によると、2025年6月のメキシコの自動車生産・輸出台数は前年同月の記録を上回り、いずれも単月で過去最高を記録した。生産台数は前年同月比4.89%増の36万1,047台、輸出は14.04%増の33万1,517台だった。国内販売は前年を下回り、5.94%減の11万6,062台だった。1~6月の合計では、生産は2024年をわずかに上回り、0.47%増の200万6,720台を記録した。他方、輸出は2.83%減、国内販売は0.25%減だった。
メキシコ自動車工業会(AMIA)のオドラシール・バルケラ事務局長は、7月7日に行われたオンライン記者会見で、メキシコ自動車業界の今後の見通しに関して、「用心する必要がある」と繰り返し述べた。いまだ達成されたことのない年間400万台という生産台数に向けて上半期は良いペースを維持しているが、米国トランプ政権による追加関税賦課の影響が危惧され、今後の動向は楽観視できないという。
米国との通商関係における緊張と不透明感、雇用にも影響か
INEGIが7月16日に発表した製造業向け月次アンケート(Encuesta Mensual de la Industria Manufacturera、通称EMIM)の結果によると、2025年5月の製造業における就業者数は前年同月比2.0%減だった。業種別で最も大きな減少幅をみせたのが、自動車や大型バス・トラック、関連部品の生産を含む輸送関連機器産業で、7.9%減少した。2024年1~5月の数字と比較しても、2025年の同期間は6.4%減となっており、同産業での就業者数の落ち込みがみられる。
AMIAや全国バス・トラック・トレーラー工業会(ANPACT)によると、各加盟企業からの従業員数削減の報告はないとのことだが、2025年1月にゼネラルモーターズ(GM)がコアウイラ州ラモスアリスペの完成車組立工場のシフト数を減らし、約800人の従業員が解雇された、という報道もある(「レフォルマ」紙1月27日付)。識者は、輸出向け生産がメインの同業界においては、米国との通商関係の緊張の長期化が、今後の雇用環境のリスクを高める要因になる、と警鐘を鳴らしている(「エル・エコノミスタ」紙7月17日付)。
(渡邊千尋)
(メキシコ)
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