モルドバ投資セミナー、インフラやIT分野への投資ポテンシャルをアピール
(モルドバ、日本)
調査部欧州課
2025年07月29日
モルドバ投資庁と海外投融資情報財団(JOI)は7月16日、東京都内でモルドバ投資セミナーを開催した。訪日中のモルドバ投資庁担当者らが同国の投資環境や、強みとしているIT分野の動向を説明した。
ドゥミトル・ソコラン駐日モルドバ大使は開会あいさつで、日本とモルドバの外交・経済関係の高まりに触れた。EUのモルドバ成長計画(注)に基づく19億ユーロの拠出により、複数のインフラプロジェクトが動いているため、日本企業にも参画してほしいと呼びかけた。
ソコラン大使の開会あいさつ(ジェトロ撮影)
モルドバ投資庁のナタリア・ベジャン長官は同国の投資環境を概説した。投資に対する国家支援として、対象の産業分野(自動車、農産品加工、テキスタイル、電子、建材、製薬化学)への50万ユーロ以上の投資に対し、投資総額の60%(うち75%は税控除、25%は補助金)が補助される制度を紹介した。また、鉄道や空港、高速道路の建設・拡張など、モルドバ成長計画の具体的なプロジェクトを紹介し、日本企業の公共調達へ参加を呼びかけた。ベジャン長官によると、国内企業のほかに、ドイツやトルコなどの企業が積極的だという。
ベジャン長官によるプレゼンテーション(ジェトロ撮影)
同庁のシニア投資アドバイザーのルミニツァ・グディマ氏は同国のIT産業について、豊富で多言語対応可能なIT人材や、複数の国家政策によって急成長しており、2024年はGDPの7.1%を占めたと説明した。
IT分野の主要政策の1つは、2018年に設立されたモルドバ・イノベーション・テクノロジー・パーク(MITP)だ。基準をクリアするIT関連企業は、バーチャル上で入居でき、7%の単一税適用や、ITビザの発給などさまざまなインセンティブを享受できる。MITPには43カ国から2,370社以上が入居しており、うち300社以上はウクライナ(42社)やルーマニア(41社)、米国(36社)をはじめとする外国資本の企業だ。日本企業は1社、データ収集・加工に従事する企業が入居している。
グディマ氏は教育機関や行政、民間企業をつなげるエコシステム「モルドバ・ハイテクパーク」の建設計画も紹介した。研究開発、スタートアップ育成、人材研修、技術移転などを促進し、革新的な技術をベースとした経済成長を目指す。2052年までに2万1,600人以上の雇用、12億ドル以上の経済効果の創出を目指している。
質疑応答では、IT分野での他国との連携についての質問に対し、ベジャン氏は通関システムの統合をはじめとするルーマニアとの連携事例を挙げた。ウクライナとは、現在の情勢下では、サイバーセキュリティーなどの協議に限定されているものの、ロシアとの終戦後には連携プロジェクトを加速させたいと語った。
(注)モルドバ成長計画は、同国経済を活性化し、EU加盟のための改革を促進するため、EUが19億ドルの資金を拠出するプログラム。
(柴田紗英)
(モルドバ、日本)
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