対内直接投資、1~5月は前年同期比6.2%増加
(ブラジル、米国、中国、アルゼンチン、イタリア、フランス)
サンパウロ発
2025年07月07日
ブラジル中央銀行は6月25日に2025年5月の対内直接投資統計を発表した。1~5月の累計は128億8,056万9,804ドル(前年同期比6.2%増)に達した(注1)。中銀が6月26日に公表した金融政策レポートは、米国の貿易・財政政策は世界経済に不安定さをもたらし、国際貿易摩擦や中東の紛争をめぐる不確実性により国際収支へのリスクが高まっており、「ブラジル国内経済は短期的に減速の可能性はあるが、(中長期的な)成長が見込まれるため、ブラジル国内に投資するインセンティブがある」と説明している。
1~5月には投資計画の発表が相次いだ。例えば、南米最大の総合EC(電子商取引)サイトでアルゼンチン発のメルカドリブレは4月7日、ブラジルでの物流、Eコマースおよび金融サービス向けテクノロジー、ロイヤルティープログラム、エンターテインメント、さらにマーケティング活動や新規従業員の採用に関し、2025年内に62億ドルを投資すると発表した。エネルギー分野でも大規模な投資発表が行われた。イタリア電力大手エネルは1月15日、サンパウロ州、リオデジャネイロ州、セアラ州で配電網の強化と近代化のため、新規従業員の採用や発電機の購入などに、2025~2027年に253億レアルを投資すると発表した。フランス電力大手エンジーも2月20日、ブラジルでの太陽光・風力発電事業や送電インフラに、2025~2027年に85億レアルを投資すると発表した。
また、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領が5月に中国を公式訪問したことを背景に、中国企業によるブラジル向け投資発表も行われた(2025年5月15日記事参照)。例えば、原子力大手の中国広核集団(CGN)は5月19日、風力・太陽光発電拠点を、ブラジル北東部のピアウイ州で建設するために最大30億レアル(約810億円、1レアル=約27円)を投資すると発表した。さらに、デリバリーサービス大手の美団(注2)は5月13日、ブラジルでデリバリーアプリ「Keeta」 事業を開始するため、今後5年間で10億ドルを投資すると発表した(サービス展開予定都市・事業開始日は未発表)。
なお、国際決済銀行(BIS)が6月29日に発表した年次報告書によると、関税引き上げを含む貿易制裁が先進国を中心に導入される場合、先進国によるブラジルなど新興国からの輸入が減少し、新興国に所在する企業への投資も低減するとみられる。米国トランプ政権が4月以降に導入している追加関税の賦課も、こうした動きを促進する可能性もある、とBISは懸念を示している。
(注1)国際収支ベースで、親子会社間の資金貸借を含まないグロスの直接投資額(フロー)。
(注2)美団は、世界最大級のフードデリバリー企業の1つ。中国では7億7,000万人のアクティブユーザーを抱えている。同社は香港証券取引所に上場しており、2024年の売上高は460億ドル。中国では、ドローンによる配達も行っている(2023年9月27日記事参照)。
(エルナニ・オダ)
(ブラジル、米国、中国、アルゼンチン、イタリア、フランス)
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