7月から新電力料金適用、燃料価格の反映方法見直し

(マレーシア)

クアラルンプール発

2025年07月01日

マレーシアのマレー半島部では、7月1日以降2027年12月31日まで、新たな電気料金体系が適用される。エネルギー移行・水資源変革省(PETRA)傘下のエネルギー委員会(EC)が6月20日に発表した(ECリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、マレー語のみ)。国営電力会社テナガ・ナショナル(TNB)は、2024年末時点では14.2%の値上げに相当する新基本料金を発表していた(2024年12月27日記事参照)が、産業界からは反発が出ていた。

2022~2024年に適用していた前体系との主な変更点は次のとおり。ポイントは、電気料金の合計額が全体としては引き下げに向かう点だ。

  1. 基本料金見直し:基本料金は1キロワット時(kWh)当たり45.40セン(0.454リンギ、約15.4円、1リンギ=約34円)とし、2024年末に発表した45.62センから引き下げる。前回体系と比べ、基本料金の平均は最大19%削減。
  2. 新たな料金体系の導入:需要家を「家庭用」と「非家庭用」に分類し、それぞれに低・中・高電圧を設定。また、全ての需要家向けに、容量料金と送電料金を導入。
  3. エネルギー効率インセンティブ導入:ひと月の使用量が1,000kWh以下の家庭や、同200kWh以下の非家庭小口需要家に恩恵。
  4. 時間帯別料金の拡充:従来、夜間から早朝に設定していた「オフピーク時間」について、土日の全日と平日午後10時~翌日午後2時(1日当たり計16時間)に拡大。
  5. 社会的配慮:農業、上下水道、鉄道など特定業種に専用料金を設定。教育機関や福祉施設には10%の割引も。主に貧困世帯を対象に月額最大40リンギの電気代補助も継続。
  6. コスト消費者転嫁(ICPT)メカニズム見直し:燃料価格の変動に合わせて半年に1度、サーチャージを調整するICPTに代わり、燃料価格や為替レートに応じて毎月金額が変動する自動燃料調整(AFA)を導入。今後はICPTに代わり、AFAを基本料金に上乗せした分が請求される。AFAが1kWh当たり3センを超える場合は政府の承認が必要。

詳細な料金表やシミュレーションは引き続きTNBウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる。今回の大規模変更は公平性や透明性、持続可能性を重視し、マレーシアのエネルギー移行を支える重要な一歩だとECは説明した。

産業界もおおむね好意的だ。例えば、ICPTの見直しを以前から要請していたマレーシア製造業連盟(FMM)は6月24日、「要素別電力コストの透明性が向上した」とし、AFA導入を評価した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。オフピーク時間帯が従来の週70時間から128時間に拡大し、週末が対象になったことも歓迎した。一方、中電圧需要家の30%が値上げに直面する可能性があるほか、高電圧でオフピーク時を利用する需要家に対しては、ピーク時の割引率が縮小するとも指摘した。

(注)TNB専用ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますより、家庭用は「Residential(Domestic)」、非家庭用は「Business(Non-Domestic)」タブを参照。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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