2025年世界平和度指数、南アジア地域で大幅低下

(インド、バングラデシュ、ブータン、アフガニスタン、ネパール、パキスタン、スリランカ)

調査部アジア大洋州課

2025年07月25日

オーストラリア・シドニーを拠点とするシンクタンク経済平和研究所(Institute of Economics and Peace:IEP)は6月19日、「世界平和度指数2025年版(Global Peace Index 2025:GPI)」(注1)を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。同報告書では、世界的にGPIが低下し、国家同士の紛争が第2次世界大戦以降で最多となり軍拡を招いている、と警鐘が鳴らされている。

GPIは、163カ国・地域のうち74カ国で改善した一方で、87カ国で悪化した。世界で最も平和な国にランクインしたのはアイスランドで、2008年の調査開始以来17年連続トップとなった。2位はアイルランド、3位はニュージーランドで、日本は前年から順位を3つ上げ12位にランクインした。

地域別では、南アジア地域(注2)のGPIが大幅に悪化し、中東・北アフリカ(MENA)地域に続いて世界で2番目に平和度が低い地域となり、前年比でも悪化した。南アジア各国の順位とポイントは次のとおり。

  • 115位のインドは、指数が前年比0.58ポイント改善し、2024年の116位から1つ順位を上げた。特に、3期目に入ったナレンドラ・モディ政権により社会不安が低減されたことから、「政治的安定性」の項目で大幅な改善が見られた。また、2024年10月に中国との係争地に配備していた軍を武装解除したことで、地政学リスクが和らげられたとした。一方、今回の指数算出期間に入っていないものの、2025年5月に発生したインドとパキスタン間での軍事衝突は、両国におけるGPIの下振れ要因となりうるとして懸念が示された。
  • 123位のバングラデシュ(前年:93位)は、GPIの悪化割合が全世界で最も大きく、前年比13ポイント悪化となった。2024年7月に発生した、公務員採用の特別優遇枠のクオータ制改革を要求する学生デモ隊と、治安部隊の大規模な衝突に端を発した一連の抗議活動により、「進行中の紛争」指標を中心に、全ての指標でGPIが低下した。

その他の南アジアの国では、ブータン21位、ネパール76位、スリランカ97位、パキスタン144位、アフガニスタン158位だった。

(注1)GPIは、23の質的・量的指標を用い、2025年3月現在で進行中の国内・国際紛争の程度、社会の安全と治安のレベル、軍事化の度合いといった3つの領域にわたり、各国の平和の度合いを測定している。

(注2)IEPの定義する南アジア地域は、インド、バングラデシュ、ブータン、アフガニスタン、ネパール、パキスタン、スリランカを指す。

(深津佑野)

(インド、バングラデシュ、ブータン、アフガニスタン、ネパール、パキスタン、スリランカ)

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