オーストラリア国内初の販売前融資保証、住宅開発を加速へ

(オーストラリア)

シドニー発

2025年07月09日

オーストラリアのニューサウスウェールズ(NSW)州政府は6月24日、州内の住宅供給を加速する支援策として、国内初となる住宅の販売前融資保証制度を発表した。支援総額は最大10億オーストラリア・ドル(約960億円、豪ドル、1豪ドル=約96円)規模で、州政府は今後5年間で最大5,000戸の新築住宅供給を見込む。

州政府が認定した販売前の住宅プロジェクトに対して、最大50%の購入を保証する。保証対象は、価格基準の場合、1戸当たりの市場価格が200万豪ドル以下、住宅プロジェクト全体では500万~5,000万豪ドルの規模が対象となる。数量基準の場合は、1プロジェクト当たり全住宅戸数の最大50%までが対象となる。

保証の仕組みとして、住宅開発計画の承認を取得した開発業者が金融機関からプロジェクト融資の条件として事前販売要件を提示された場合に、州政府に保証制度の申請が可能となる。州政府は申請のあったプロジェクトと開発業者の審査を実施し、認定プロジェクト候補となった開発業者と保証条件(注1)について交渉を行う。開発業者と金融機関の双方がその保証条件に合意した場合、州政府は開発業者と住宅販売前融資保証の正式な契約を締結する。住宅が売れ残った場合には、開発業者は契約に基づいて州政府に保証請求できる。州政府は契約で合意した価格で売れ残った住宅を買い取る(注2)。一方、開発業者は契約締結日から6カ月以内に住宅建設を開始する必要がある。

NSW州生産性・平等委員会が2024年8月に公表した住宅供給の課題のレポートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、金融機関の融資条件として求められる事前販売条件を満たすことが住宅業界にとって大きな課題となっている。融資を得るために、総住宅数の80%までの事前販売が求められるケースも出てきているという。

販売前融資保証制度は10月から申請受け付けを開始し、最長5年間実施する予定だ。

(注1)州政府は保証条件の最も重要な事項として、プロジェクト内のどの住宅を保証対象にするか、NSW州が住宅を購入する際の事前合意価格(市場評価額からの割引額)などを挙げている。

(注2)契約では、州政府が事前販売の保証対象とした住宅について、開発業者はいつでも民間に転売可能となる。最終的には住宅完成時には全て民間に転売されることを州政府は想定している。もし開発業者が転売できなかった場合、住宅の建設が完了し居住の準備が整った時点で州政府が住宅を買い取る。

(山崎美樹)

(オーストラリア)

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