メルコスール首脳会合、アルゼンチン、ブラジル首脳の考え方の相違が鮮明に
(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール)
ブエノスアイレス発
2025年07月23日
アルゼンチンの首都ブエノスアイレス市で7月3日、メルコスール首脳会合が開催された。加盟国であるアルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、ボリビアの首脳が出席した(注1)。
各国首脳が演説を行った中で、議長国アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領と次の議長国ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領の演説の内容は対照的だった。ミレイ大統領は、メルコスールを世界から私たちを守る盾として考えるのをやめ、グローバル市場に効果的に進出するための槍(やり)として考える必要があり、対外共通関税の税率引き下げは物価抑制につながるだけでなく、他国・地域との貿易協定の締結が容易になる可能性があると主張した。それに対してルーラ大統領は、世界が不安定で脅威に満ちた状況にある時に安全を感じられる場所を求めるのは自然なことで、メルコスールに属することや、対外共通関税率の適用は、他国の貿易戦争から自国を保護すると主張した。
対外共通関税率についての考えには相違はあったが、自由貿易について両者の主張に大きな違いはなかった。両者いずれもが欧州自由貿易連合(EFTA)とのFTA交渉終了を歓迎し、さらに、交渉が終了したEUとの協定の早期署名、アラブ首長国連邦(UAE)との交渉の2025年内妥結、インドとの特恵貿易協定およびイスラエルとのFTAの再交渉の進展を期待する。その中でもルーラ大統領は、日本、中国、韓国、インド、ベトナム、インドネシアとの緊密な連携がメルコスールに利益をもたらすと言及した。
ミレイ政権は、米国トランプ政権による追加関税の賦課など国際情勢の変化に対応するため、対外共通関税率の例外品目の拡大を主導してきた(注2)。2025年4月に加盟国外相は、これまでの対外共通関税率の例外品目に加えて、「一時的例外品目リスト」の作成で合意した。対外共通関税率を適用している正式加盟4カ国(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)はそれぞれ、メルコスール対外共通関税分類番号(NCM)50品目(NCM8桁ベース)を「一時的例外品目リスト」に指定することを認めた(添付資料表参照)。2025年6月25日付け共同市場審議会(CMC)決定1/2025号により承認済みだが、各国が国内法に組み込む手続きはこれからだ。
ミレイ大統領は、メルコスールと共に歩むか、単独で歩むかにかかわらず、アルゼンチンにもはや待つ時間はなく、より多くの貿易、経済活動、投資、雇用を緊急に必要としており、そのためには、自由もまた緊急に必要なのだ、と述べて自身の演説を結んだ。
(注1)ボリビアは、2024年7月にメルコスールに正式加盟した。4年以内に国内法規をメルコスールの規制・枠組みに適用(主に対外共通関税率の適用)させ、加盟手続きを完了させる必要がある。よって、現時点ではメルコスール首脳会合などには出席しているものの、関税同盟としてのメルコスールの運用は行われていない。
(注2)メルコスールは関税同盟のため、非加盟国の産品に対して加盟国共通の関税率である対外共通関税率を適用する。なお、CMC決定22/1994号により、各国が例外品目(NCM8桁ベース)を設けることを認めている。CMC決定58/2010号により、例外品目の上限は、アルゼンチン100品目、ブラジル100品目、パラグアイ649品目、ウルグアイ225品目。
(西澤裕介)
(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール)
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