日本最大級ヘルスケア特化型ピッチイベント、HVC KYOTO 2025開催

(日本、米国)

京都発

2025年07月07日

日本国内外のヘルスケア分野のスタートアップ企業や、起業志向の高い研究者などの海外展開を支援するピッチイベント「HVC KYOTO 2025」が6月30日~7月1日に京都リサーチパーク(KRP)で開催された。本イベントはKRPや京都府、京都市、ジェトロが2016年から主催し、2025年で10年目を迎えた。

HVC KYOTOはバイオテックとメドテック(注1)の2領域に特化した、英語で行われるイベントだ。採択された企業・研究者は、製薬企業や専門家から約2カ月間メンタリングを受けた後、2日間のデモデーで事業提携先や共同研究先と個別商談会およびピッチを行う。今回はスタートアップ12社、研究者10人が採択され、30日に外資契約大手企業の担当者らと商談。1日には最終選考に残った15組がピッチを行ったほか、基調講演や併設展示が行われた。

また、2025年度は関西スタートアップ・アカデミア・コアリション(KSAC)が主催する「BIE Workshop in Japan supported by SPARK Global外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注2)」との連携を行った。同ワークショップは、科学者・医療従事者・起業を志す研究者を対象に、必要なスキルを実践的に学び、生命医学分野における創造性、革新力、橋渡し研究の実践力を高めることを目的としており、今後のHVC KYOTOへの登壇候補者育成プログラムとして期待される。

1日の冒頭では、ジェトロの仲條一哉理事が開会あいさつをし、HVC KYOTOを契機に世界へ羽ばたくスタートアップの誕生、および、京都と海外のエコシステム連携活性化による京都の生命科学エコシステムのさらなる発展を願った。

祝辞では、ジョンソン・エンド・ジョンソンのアジア大洋州地域のインキュベーションラボで部長を務めるシャロン・チャン氏より、日本の生命科学分野のさらなる可能性について話があった。具体的には、日本は生命科学関連の大学・研究機関数は世界トップクラスであり、優れた研究・技術環境が集積するイノベーションの拠点であること、また同社が京都大学を始めとして、複数の組織と開発・製造・商業化などの点で日本と積極的に連携していると述べた。

基調講演では、SPARKのダリア・モシュリー=ローゼン氏が、バイオ技術分野における研究成果の社会実装の難しさとそのギャップを埋めることの重要性を述べた。

ピッチセッションには、シードやアーリーステージ(注3)を中心とするスタートアップ15社が登壇し、事業提携や資金調達に向けて自社の技術や事業などをアピールした。有望と判断された企業・研究者は、各種機関から受賞される。

海外成長が期待できる企業を対象にした「ジェトロ賞」は、腹腔内の組織深部を可視化する近赤外分光腹腔鏡システムを開発する、産業技術総合研究所の高松利寛氏が受賞した。

高松氏は「開腹手術と比較して視野が狭くなる腹腔鏡手術において、近赤外線ハイパースペクトラルイメージング技術と人工知能(AI)を使用することにより、肉眼では見ることができない組織深部の血管や神経を探知する技術を開発した。同技術を使用することで重篤な手術合併症を回避し、より安全な腹腔鏡手術の普及に貢献したい」と述べた。

写真 「ジェトロ賞」を受賞した産業技術総合研究所の高松利寛氏(右)(ジェトロ撮影)

「ジェトロ賞」を受賞した産業技術総合研究所の高松利寛氏(右)(ジェトロ撮影)

(注1)メディカル(医療)テクノロジー(技術)を組み合わせた造語で、情報通信技術(ICT)を医療に活用する取り組みのこと。

(注2)米国スタンフォード大学の創薬・診断法開発推進プログラム。創薬シーズ開発における基礎研究から臨床試験までの橋渡し研究を研究者自らが推進するために必要な教育やメンタリングを実施する。

(注3)スタートアップの成長段階を示す。シードステージとは、ビジネスモデルやコンセプトはあるが、製品やサービス化に至っていない準備段階のこと。アーリーステージとは会社設立後、事業が軌道に乗るまでの時期を指す。

(佐竹晋、安藤琢朗)

(日本、米国)

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