日・ウクライナ租税条約、8月1日に発効
(ウクライナ、日本)
調査部欧州課
2025年07月07日
日本の外務省は7月2日、「所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国政府とウクライナ政府との間の条約」(日・ウクライナ租税条約)の発効にかかる日本側手続きが完了したことを発表した。同条約は8月1日に発効する。
この条約は、1986年に発効した現行の租税条約(所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の条約)をウクライナとの間で改正するものだ。2024年2月19日に両国政府の署名が行われ、ウクライナ側では同年6月5日、最高会議の承認をもって批准していた。
この条約のポイントは次のとおり。
- 同条約は、一方または双方の締約国の居住者(個人、法人、法人以外の団体を含む)が対象となり、適用する現行の租税は、日本では(i)所得税、(ii)法人税、(iii)復興特別所得税、(iv)地方法人税、(v)住民税、ウクライナでは(i)個人所得税、(ii)企業の利得に対する租税となる。
- 事業利得については、企業が進出先国内に支店などの恒久的施設を設けて事業活動を行っている場合に、その恒久的施設に帰属する利得に対してのみ、進出先国で課税することができる。
- 投資所得については、源泉地国の課税の上限(限度税率)が改正される。配当に対しては、現行の租税条約では15%の限度税率だったが、持ち分(注)25%以上を6カ月以上保有する法人から受ける配当については、5%に軽減した。著作権、特許権、商標権などの使用料については、現行の租税条約では著作権以外の使用料に対して10%の限度税率だったが、一律5%と定めた。
- 条約の規定に適合しない課税は、両国の税務当局間の協議による合意に基づいて解決し、2年以内に解決しない場合は、第三者で構成する仲裁委員会の決定により解決する。
上記のほか、脱税や租税回避への対処のための情報交換や徴収共助、条約の特典の乱用防止のための規定も含まれる。投資所得にかかる限度税率の改正により、親子会社間での配当や、特許権や商標権使用料に係る税負担は軽減される。
同条約の8月1日の発効により、適用されるのは次のとおり。
(1)日本において
- 課税年度に基づいて課す租税に関しては、2026年1月1日以後に開始する各課税年度の租税
- 課税年度に基づかないで課す租税に関しては、2026年1月1日以後に課される租税
(2)ウクライナにおいて
- 源泉徴収される租税に関しては、2026年1月1日以後に支払われる額
- そのほかの租税に関しては、2026年1月1日以後に開始する各課税年度
情報交換や徴収共助に関する規定は、対象となる租税が課される日、または、その課税年度にかかわらず、2025年8月1日から適用される。
(注)持ち分は、日本法人支払いの場合は議決権、ウクライナ法人支払いの場合は資本を指す。
(柴田紗英)
(ウクライナ、日本)
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