アマゾン・プライムデー期間中の米オンライン売上高は前年比30.3%増、関税懸念を受けた新学期の前倒し購入が寄与

(米国)

ニューヨーク発

2025年07月15日

米国のアマゾンは7月8~11日に開催した夏の有料会員向け大規模セール「アマゾン・プライムデー」が過去最大の売上高になったと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同社は、買い物客が割引商品を選別する時間を確保できるよう、今回は開催期間を例年の2日間から4日間に延長した。

アマゾンなどEC事業者のコンサルティングを手掛けるモメンタムコマースの創設者兼最高経営責任者(CEO)のジョン・シア氏は「開催初日の売り上げは前年と比較して芳しくなかった。これは、イベント期間の長期化により、買い物客が『宝探し』をよりするようになったためだ」と指摘した。同氏によると、例年はセール期間が短かったため、買い物客は割引を逃すことに不安になり、焦りを感じていた。しかし今回は、消費者は商品をみてショッピングカートに入れてはいるものの、より買い得な商品が出るのを待ち、購入の決断を先延ばしにしたという。

トランプ政権による追加関税が8月1日から本格的に導入(2025年7月14日記事参照)される前に、消費者が値上げ前の大幅な値引きを利用する機会となった。米国では9月から新学期が始まることもあり、新学期前の購入を意識した大幅な割引が功を奏した。特に事務用品(前年比2.1倍)や、電子機器(95%増)、書籍(81%増)などの販売が好調だった。また、多くの買い物客は高価な電化製品や高級品を買い求めるよりも、食器用洗剤などの生活必需品を買い込む傾向がみられた。米国調査会社ヌメレーターが実施したアンケート調査(注)によると、購入された商品の3分の2は価格が20ドル未満で、平均世帯消費額は156ドルだった。また、買い物客の半数以上がセールになるまで購入を先送りしていた商品を購入したと回答した。

アマゾンと並行して、大手小売業者のウォルマートやターゲットなども、同時期にセールイベントを実施しており、米国ソフトウエア大手のアドビによると、アマゾン・プライムデーを含めた期間中の小売業者のオンライン売上高は前年比30.3%増の241億ドルに達した。また、生成AI(人工知能)を搭載したチャットボットなどの利用も拡大している。アマゾン・プライムデー期間中、米国小売りサイトへの生成AIによるトラフィックは前年比で30倍以上に急増した。アドビは、AIによるトラフィックは、有料検索やメールなどと比較すると、まだ控えめだが、トラフィックの増加は買い得商品や特定の商品情報を探す消費者へのAIのインパクトを示していると指摘した。

(注)アマゾン・プライムデー期間中に商品を購入した米国の消費者5,000人を対象に実施された。

(樫葉さくら)

(米国)

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