法人所得税法を改正、優遇措置対象に変更も
(ベトナム)
ハノイ発
2025年07月10日
ベトナム国会は6月14日、法人所得税法の改正案を可決した。改正法は10月1日に施行し、2025年課税年度から適用する。法人税の標準税率は現行法と同じく20%だが、総収入に応じて異なる税率が適用される場合がある。また、法人税の優遇措置の対象なども変更される。
法人税の税率は、年間の総収入が500億ドン(約2億8,000万円、1ドン=約0.0056円)を上回る企業には標準税率の20%が適用される。一方、30億~500億ドンの企業は17%、30億ドン未満の企業は15%の優遇税率が適用される。ただし、親会社の総収入が500億ドンを上回る場合などは、優遇税率の対象外となる。
また、法人税優遇措置の対象分野には、半導体の設計・製造・検査事業や、人工知能(AI)データセンター、ハイテク農業、中小企業・スタートアップ向けの支援サービス〔技術支援、ビジネスインキュベーション(注1)、コワーキングエリアビジネス〕などを新たに追加した。
一方、工業団地に進出する投資プロジェクト(注2)には、現行法で2年間の免税と、その後4年間の50%減税が適用されていたが、改正法では10月以降に認可されるプロジェクトは優遇措置の対象外となる。また、資本金6兆ドンを超えるプロジェクトへの優遇も撤廃する。
さらに、電子商取引(EC)などを含むデジタルプラットフォームを通じてベトナムで商品やサービスを提供する外国企業は、恒久的施設を持たない場合でも、納税義務があることを明記した。これに対しては、本社所在国の法律との整合性や二重課税リスクなども確認する必要がある。
民間企業の活性化推進
国会は法人所得税法とは別に、5月17日に「民間経済開発のための特別なメカニズムと政策に関する国会決議198号(198/2025/QH15)」を承認した。この決議では、スタートアップ企業やベンチャーキャピタル(VC)企業(注3)への優遇措置、大企業による中小企業向けの人材教育費用の税控除などを定めた。これらは法人所得税法の改正内容には記載されていないが、今後のさらなる税法改正で反映される可能性がある。
また、国会決議198号は、共産党政治局(注4)が5月4日付で公布した「民間経済開発に関する政治局決議68号(68-NQ/TW)」の内容を具体化し、計画を定めたものだ。政治局決議68号は、民間経済を「国家経済の最重要な原動力」と位置づけ、民間企業の活動の重要性を引き上げた上で、国際競争力のある複合企業や中小企業・スタートアップの育成と活躍を推進する方針を示している。
(注1)起業家や新しいビジネスを支援する活動。具体的には、オフィスや資金、経営ノウハウなどの資源提供や事業立ち上げのサポートを指す。
(注2)経済・社会条件の整備された地域の工業団地を除く(政令91/2014/ND-CP第1条6項)。
(注3)成長が期待されるスタートアップ企業や未上場企業に対して出資を行う投資会社を指す。
(注4)共産党政治局は党の意思決定機関。党大会や中央委員会の決議の実現を指導・監督し、党の活動方針や人事などを実質的に決定している。
(萩原遼太朗)
(ベトナム)
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