米国追加関税導入で対米輸出が約380億ユーロ減、イタリア産業連盟が試算
(イタリア、米国、EU)
ミラノ発
2025年07月24日
日本の経団連に相当するイタリア産業連盟(コンフィンドゥストリア)が7月21日に発表した試算によると、ドナルド・トランプ米大統領が7月12日に表明した8月1日からのEUに対する30%の追加関税が課せられた場合、イタリアの対米輸出額は半減する見込みだ(2025年7月14日記事参照)。
コンフィンドゥストリアは、EUからの全ての対米輸出製品が30%関税の対象となり、ユーロ・ドル為替レートが現在の水準で推移した場合、イタリアの対米輸出は約380億ユーロ減少すると推計した。その額はイタリア産品の米国での売り上げの58%、イタリア輸出総額の6.0%、間接的な輸出を含むイタリア製造業の生産額の4.0%に相当すると試算した。また、GDPへの影響は大きく、2027年にベースラインシナリオを0.8ポイント下回ると予想している。
コンフィンドゥストリアのエマヌエレ・オルシーニ会長は7月16日、イタリア下院の会議で、米国から課せられる関税がたとえ20%だとしても276億ユーロ、15%の場合は226億ユーロ、10%の場合は176億ユーロの影響があるとしている。また、米国関税猶予期限の8月1日までに残された時間がわずかなことを強調し、EUに迅速な対応を求めた(現地経済紙「イルソーレ24オーレ」7月16日)。
ジョルジャ・メローニ首相は7月17日、イタリア労働組合連盟(CISL)の大会で、「米国との貿易戦争は労働者に悪影響を及ぼす。イタリア政府はそれを回避するため、他の(EU加盟国の)指導者や欧州委員会と連携し、尽力している」と述べた。同首相は13日にも政府の公式発表として同様の姿勢を示したものの、具体的な動きは伝わっていない。
米国関税の影響が特に懸念される品目の1つの農産物については、イタリア農業事業者団体のコルディレッティが7月12日、30%の追加関税が課された場合、米国の家庭(消費者)とイタリアの農業食品関連企業に最大で23億ユーロの損害をもたらす可能性があるとの試算を発表した。同試算によると、イタリアの代表的な農産物のチーズの関税率は、既に課されている関税と合わせた場合45%、ワインは35%、トマト加工品は42%となる。また、米国市場でイタリア産の農産物が価格高騰することにより、メード・イン・イタリーの模倣品がさらに拡散されることに対しても、警鐘を鳴らしている。
イタリア金属加工業連盟(フェデルメカニカ)のシモーネ・ベッティーニ会長は7月13日、「イルソーレ24オーレ」の取材に対し、「加工機械産業では、米国に直接輸出している企業だけでなく、EUを中核市場とする部品のサプライチェーン全体に対しても、間接的な影響を及ぼすことは間違いない」と語った。
(平川容子)
(イタリア、米国、EU)
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