2025年の煙害(ヘイズ)の深刻化リスク、2024年から引き上げ
(シンガポール、インドネシア、マレーシア)
シンガポール発
2025年07月31日
シンガポール国際問題研究所(SIIA)は7月28日、「煙害(ヘイズ)アウトルック2025」(以下、報告書)を発表した(SIIAプレスリリース)。2025年のインドネシア、マレーシア、シンガポールに影響を与える深刻な国境を越えたヘイズが発生する可能性について、天候、市場、政策の3つの要因に基づいて分析し、「緑」(低リスク)、「琥珀(こはく)」(中リスク)、「赤」(高リスク)の3つで評価。2025年下半期のリスクを「琥珀」(中リスク)と発表した。森林伐採の増加、一次産品価格の変動、政策移行の不確実性に対する懸念の高まりを反映し、2024年の「緑」(低リスク)から変更した。
SIIAは報告書の中で、インドネシアでは2023年から2024年にかけて森林伐採が増加したとの同国NGOアウリガ・ヌサンタラの推計結果に言及したうえで、2025年7月に火災が急増したスマトラ島も森林伐採が増加していたと言及。また、歴史的に農産品価格高騰の後に森林伐採が増加してきたことに触れたうえで、プランテーションの拡大と農産物の供給が需要に追い付いておらず、農産品価格がさらに押し上げられる可能性を指摘した。さらに、インドネシアでのバイオ燃料の使用増加などが森林破壊につながる可能性があるとの懸念をNGOが表明していると紹介した。
ヘイズは、インドネシア・スマトラ島などでの大規模な野焼きや森林火災によって生じた煙が南西季節風(モンスーン)により、マレー半島やシンガポールに流されることで生じる煙害。2015年にはヘイズが深刻化した(2015年11月4日記事、2016年1月12日記事参照)。南洋理工大学のユーストン・クア教授などによる推計によると、シンガポールで当時2カ月続いたヘイズによる被害は18億3,000万シンガポール・ドル〔約2,100億円、Sドル、1Sドル=約115円(2025年7月28日時点)〕に上った。
(朝倉啓介)
(シンガポール、インドネシア、マレーシア)
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