独占協定禁止規定改正草案、垂直的独占協定の適用除外に関する基準を明確化
(中国)
北京発
2025年06月10日
中国の国家市場監督管理総局は6月3日、「独占協定禁止規定(改正草案意見募集稿)」を発表した(注1)。意見募集期限は7月3日まで。同規定の改正の目的は、「独占禁止法」第18条第3項に基づき、独占協定が適用除外となるセーフハーバールール(2022年6月30日記事参照、注2)の適用基準・要件を制定し、事業者と法執行機関に明確なガイドラインを提供することとなっている。
改正の背景として、「独占禁止法」ではセーフハーバールールに関して、国務院独占禁止法執行機構が市場占有率に関する詳細基準および他の要件を制定することを示したものの、原則的な規定にとどまっていた。さらに、現行の「独占協定禁止規定(以下「規定」)」第17条においても原則的な規定のみを維持していることから、「規定」第17条の改正により、科学的合理性をもったセーフハーバールールの適用基準・要件を確立するとした。
改正草案では、「規定」第17条を改正し、新たに第18条を追加した。主な内容は次のとおり(改正箇所の対照については添付資料表参照)。
(1)事業者の合致すべき市場占有率に関する基準の明確化
「独占禁止法」第18条第1項第1号、第2号に定められた転売価格を固定、制限する垂直的独占協定のセーフハーバールールの適用基準として、事業者の市場占有率が5%を下回ることを求め、第3項に定められた他の種類の垂直的独占協定については、事業者の市場占有率が15%を下回ることを求めている。
(2)事業者の合致すべき他の要件の明確化
売上高に関する要件として、改正草案では「独占禁止法」第18条第1項第1号、第2号に定められた転売価格を固定、制限する垂直的独占協定のセーフハーバールールの適用基準として、事業者の関連市場における売上高が1億元(約20億円、1元=約20円)を下回ることを、第3項に規定された他の種類の垂直的独占協定については事業者の関連市場における売上高が3億元を下回ることを求めている。また、取引相手が同等の基準と要件に同時に合致するべきであることを明確にした。
(3)セーフハーバールールが適用されない基準の明確化
競争制限・排除効果を持つ、またはその可能性があることを証明する証拠を有する協定に対してはセーフハーバールールを適用しないとした。また、特定の業界、分野、または特定の協定については別途、特別な規定を適用する余地が残されているとした。
これらのほか、草案では事業者の挙証責任(証明責任)や証明資料、法執行機関の審査手続や法律上の効果なども明確化された。
なお、在中国日系企業などで構成する中国日本商会が作成する「中国経済と日本企業2024年白書」では、垂直的協定におけるセーフハーバー制度の運用基準の明確化と同制度の適用範囲を水平的協定にも拡大することを要望していた(注3)。
(注1)改正前の独占協定禁止規定は、国家市場監督管理総局令第65号として2023年3月10日に公布され、2023年4月15日に施行された。日本語訳はジェトロウェブサイト独占契約禁止に関する規定
(487KB)を参照。
(注2)2022年に改正された「独占禁止法」の第18条第3項では、垂直的独占協定禁止に関して、「事業者が関連市場における市場占有率が国務院独占禁止法執行機関の定める基準を下回ることを証明でき、かつ、国務院独占禁止法執行機関の定めるその他の条件に合致する場合は禁止しない」とする「セーフハーバールール」を定めている。
(注3)垂直的協定とは、メーカーと販売店・代理店の関係など、生産・流通の異なる段階間の協定を指し、水平的協定はメーカー間など競合事業者間での協定を指す。
(蔣春霞)
(中国)
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