ホルムズ海峡の代替輸送は限定的、日本は原油を輸入し自動車を輸出
(中東、イスラエル、イラン、日本、世界)
調査部中東アフリカ課
2025年06月19日
イスラエルは6月13日、イランの核施設などへの攻撃を行い(2025年6月13日記事参照)、これに対し、イランは同日に反撃を行った。その後も攻撃の応酬が続いている。
イランやイスラエルは両国の石油施設も攻撃しており、また、近隣諸国に産油国が多いため、石油価格が上昇した。さらに、2国間の軍事衝突により、貿易やエネルギー供給の要衝であるホルムズ海峡への影響に注目が集まっている。米国エネルギー情報局(EIA)が6月16日に発表した報告によると、2024年にホルムズ海峡を通過した原油は日量約2,000万バレルと世界の石油消費量の約20%に当たり、最も重要な石油のチョークポイントであるという。
ホルムズ海峡迂回や代替手段は限定的
EIA報告書では、ホルムズ海峡が閉鎖された場合、原油を輸送する代替手段はほとんどないと指摘した。代替として、サウジアラビアでは紅海沿いのヤンブー港へのパイプライン、アラブ首長国連邦(UAE)ではオマーン湾沿いのフジャイラへのパイプライン、イランではオマーン湾沿いのヤスクへのパイプラインなどがある一方、輸送能力は限られるという。
なお、紅海においても2023年以降、イエメンのフーシ派が民間船舶の攻撃を繰り返してきた(「地政学的影響を踏まえた中東・アフリカの物流動向」参照)。
近年の通行量に大きな変動はない
IMFの「ポートウォッチ」によると、ホルムズ海峡の6月9日から6月15日までの平均船舶通過数は1日当たり110隻で、2024年同期間の112隻、2023年同期間の105隻と比べ大きな変動はない。なお、通過する船舶のうち約6割がタンカーだという。
一方で、英国海軍関連機関の英国海運貿易オペレーション(UKMTO)は6月16日、ホルムズ海峡において電子妨害の増加を確認し、注意して航行するよう呼びかけた。同機関は17日、船舶の衝突事故を確認したが、地域の紛争に起因する兆候はないと報告した。
なお、2024年4月には、イランのイスラム革命防衛隊がホルムズ海峡付近で貨物船を拿捕(だほ)した事案もあったが、船舶通過数に変動はなかった(2024年4月22日記事参照)。
日本もホルムズ海峡経由でも中東貿易
財務省貿易統計速報値(注)によると、2024年の日本の中東向け輸出は前年比18.0%増の4兆1,924億円、輸入は2.7%減の12兆9,739億円だった(2025年1月23日記事参照)。国別では、輸出額も輸入額も対UAEが首位で、次いで、サウジアラビア、カタール、クウェートとなり、輸送にホルムズ海峡を通る国々も多い。5位のオマーンはホルムズ海峡の通過は不要だ。日本の中東からの輸入品目では、「原油および粗油」が最多で、同品目の世界から輸入額(10兆8,695億円)の95.1%、輸入量(1億3,673万キロリットル)の95.2%を占めた。輸出品目では、自動車が50.7%を占め、前年比12.3%増の2兆1,240億円(約76万台)だった。
なお、イスラエルとイランの軍事衝突についてはG7サミット(6月16~17日)でも議論された(2025年6月18日記事参照)。
関連情報は特集「イスラエル・イラン情勢に関する動向、各国の反応」を参照。
(注)財務省貿易統計の速報値を利用。また、同統計ではトルコは中東に含まれず、西欧に含まれる。
(井澤壌士)
(中東、イスラエル、イラン、日本、世界)
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