EUの森林破壊防止デューディリジェンス規則、ブラジルを「標準リスク国」に分類

(ブラジル、EU)

調査部米州課

2025年06月10日

欧州委員会は5月22日、森林破壊防止のためのデューディリジェンス義務化に関する規則(EUDR:EU Deforestation Regulation)の世界各国のリスク分類を発表し、ブラジルを「標準リスク国」に分類外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(注1)。

EUDRは、気候変動対策と生物多様性の保護を目的に、EU域内で販売、または域外へ輸出する対象品について、「森林破壊フリー」であることを確認するためのデューディリジェンス(DD)の実施を企業に義務付けるもの。具体的には、事業者は、対象製品を域内市場に投入する前に、これら製品に関するデューディリジェンス宣言書を、加盟国当局に提出しなければならない。規則の対象品目は、パーム油、牛肉、木材、コーヒー、カカオ、ゴム、大豆およびこれらを原料とする皮革製品、チョコレート、家具、印刷紙、一部のパーム油ベースの派生製品など(注2)。同規則は、2023年6月29日に施行されたものの適用開始が延期され、大・中規模企業は2025年12月30日から、小規模・零細企業は2026年6月30日から適用開始される。

ブラジルは、対象品目を多くEU向けに輸出する。2024年のブラジルからEU向け輸出品目の上位10位(輸出額全体の71.7%)を確認すると、第2~4位の、コーヒー(HSコード0901)、大豆油かす(HSコード2304)、大豆(HSコード1201)が、本規則の対象品目になっており、これらを合わせるとブラジルからEU向け輸出額全体の26.9%を占める。

5月23日付現地紙「バロール・エコノミコ」によれば、この度公開されたリスク分類で、ブラジルは他の49カ国とともに「標準リスク」と評価されたが、これにブラジル産業界は安堵(あんど)しているという。ブラジルは、アマゾン熱帯雨林の森林破壊が進んでいるとして度々EUから非難されており、ブラジル産業界は、今回のリスク分類でブラジルが「高リスク」に分類される可能性を危惧していた。なお、ペドロ・ミゲル・ダ・コスタ・イ・シルバ駐EUブラジル大使は「『高リスク』分類されているのは、ロシア、ベラルーシ、ミャンマーおよび北朝鮮のみで、これらの国は西側諸国から何かしらの制裁を既に加えられている。こうしたリスク分類は差別的だ」と批判し、リスク分類の平準化を求める考えを明らかにした(5月23日付現地紙「バロール・エコノミコ」)。

(注1)ブラジル以外のメルコスール諸国(アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ)は、アルゼンチンおよびパラグアイが「標準リスク国」、ウルグアイが「低リスク国」に分類されている。アルゼンチン政府は、EUが同国を「標準リスク」に分類したことについて、「アルゼンチンは、同規則第29条の『低リスク』指定の技術的基準を満たしている」として、EUに対し正式に異議申し立てを行った(5月31日付現地紙「メルコプレス」)。

(注2)対象品目の詳細は、EU規則2023/1115の付属書I外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(辻本希世)

(ブラジル、EU)

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