デジタル技術の最前線目指す「データ、AI、量子技術」の3つの国家戦略発表
(ルクセンブルク、EU)
ブリュッセル発
2025年06月11日
ルクセンブルク政府は5月19日、2023年11月に発足した連立政府の連立協定の取り決めの一部として、同国が新しい技術とデジタル化の最前線に立つための3つの国家戦略[データ、人工知能(AI)、量子技術]を発表した。各戦略の概要は次のとおり。
- データ国家戦略:同国がデータ先進国になるための基盤要素として、データへのアクセスと再利用に向けた合理的かつ集中的なアプローチを進め、各機関の連携を強化する。データ保護とプライバシーに重点を置き、国民の信頼を維持しながらデータを活用できるようにする。
- AI国家戦略:倫理的に、かつ、欧州の価値観に沿った方法で、幅広い分野でAI利用を実現するための実証に重点を置く。デジタルインフラを擁し、EUのデジタル主権の能力強化に貢献する。
- 量子技術国家戦略:量子技術開発の先駆者として、高付加価値をもたらす最先端の研究を進め、業界に経済的価値を創出する。さらに、産官学連携によって量子技術のイノベーション・エコシステムを構築し、暗号システムからの脅威に対応し、今後の量子技術を取り巻く業界のセキュリティーを強化する。具体的には、量子コンピュータのインフラとしてルクセンブルク企業ルックスプロバイドが開発した「MeluXina-Q」を導入し、実データを活用したネットワーク性能の最適化や、量子コンピュータからの攻撃にも耐え得る耐量子計算機暗号(Post-Quantum Cryptography、PQC)の開発などに注力する。また、各機関との連携や、省庁間での安全な通信を実現するために、量子鍵配送(Quantum key distribution、QKD)技術などの研究も加速していく。
ルクセンブルクは、欧州高性能コンピューティング共同事業(EuroHPC JU)により、AIで欧州のリーダーシップを牽引する「AIファクトリー」(2024年2月1日記事参照)の設置場所の1つに選ばれた。AIによって最適化されたスーパーコンピューティングシステム「MeluXina-AI」が中核となり、2026年中ごろの稼働開始を目指す。同システムは現在稼働中のスーパーコンピューター「MeluXina」と併設され、将来的には「MeluXina-Q」への接続も予定されている。
(大中登紀子)
(ルクセンブルク、EU)
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