米USTR、メキシコ自動車部品製造施設の労働問題解決を発表、トランプ政権下で初

(米国、メキシコ)

ニューヨーク発

2025年06月04日

米国通商代表部(USTR)は6月2日、メキシコ政府に事実確認を要請していたメキシコ国内の自動車部品製造施設での労働問題が解決したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

同事案は、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に設けられた「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づいて問題解決が図られていた。USTRは2024年4月、メキシコの自動車部品メーカーのアルダイン・オートモーティブ・メキシコシティの製造施設での労働問題について、メキシコ政府に事実確認を要請していた(2025年4月4日記事参照)。

USTRの発表によれば、メキシコ政府は労働権侵害の事実を認定した上で、アルダインと協力して是正措置を講じた。具体的には、アルダインは不当に解雇した労働者に給与を遡及(そきゅう)して支払ったほか、結社の自由および団体交渉権を尊重するとの中立的声明とガイドラインを策定し、全従業員に研修を実施するなどした。これらの是正措置を踏まえて、USTRは労働問題が解決したと結論付けた。

労働問題の解決を受けて、ジェミソン・グリアUSTR代表は、メキシコ政府への事実確認要請と同時に停止していた、当該施設からの輸入に対する関税の清算を再開するよう、スコット・ベッセント財務長官に要請した。

第2次トランプ政権発足後、RRMを通じて労働問題の解決に至った事案は今回が初めて。なお、今回の事案のほか、米国政府がRRMに基づきメキシコ政府に労働問題の確認を要請した後、問題解決の発表に至っていない事案が5件、米国政府が是正措置を是認しないなどの理由でRRMに基づく紛争解決パネルで係争中の事案が5件ある(注1)。残る事案も解決されるかが引き続き注目される(注2)。

(注1)これまでのRRMに基づく事案については、USTRウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(注2)RRMを含む、トランプ政権の「ビジネスと人権」政策の展望は、2025年5月9日付地域・分析レポート参照

(葛西泰介)

(米国、メキシコ)

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