5月のインド乗用車販売台数は横ばい
(インド)
ベンガルール発
2025年06月20日
インド自動車工業会(SIAM)は6月16日、5月の自動車統計(出荷ベース)を発表した。乗用車〔多目的車(UV)とバンを含む〕の国内販売台数は30万3,099台で、前年同月比0.8%増と横ばいだった(添付資料表1参照)。前年同月比7.6%増の19万6,821台だったUVと、同12.5%増の1万2,327台だったバンは伸びたが、一般乗用車は同12.2%減の9万3,951台と減少した。なお、表1の数字には含まれていないが、地場タタ・モーターズの乗用車販売台数を含めると、34万4,656台に上る(注1)。タタを除く自動車販売全体(乗用車、二輪車、三輪車)では、同1.8%増の201万2,969台の横ばいだった。
SIAMのラジェシュ・メノン事務局長は「四輪、三輪、二輪ともに、安定した業績だった」と評価した上で、今後数カ月の見込みとして「直近6カ月間でインド準備銀行(RBI、中銀)が政策金利を100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利下げしたこと(注2)や、平均以上のモンスーン期の雨量の予測が購入のしやすさや消費者の購買意欲を向上させ、自動車業界全体の底上げにつながる」と期待を寄せた。
メーカー別乗用車販売(添付資料表2参照)では、首位のマルチ・スズキが前年同月比5.6%減の13万5,962台と減少したが、2位のマヒンドラ&マヒンドラは同21.3%増の5万2,431台で、前月から続いての2桁成長だった。現代は同10.8%減の4万3,861台と不調が続く。トヨタ・キルロスカは同22.2%増の2万9,230台で、勢いが続いている。他の日系メーカーでは、ホンダは同18.1%減の3,950台、日産が38.8%減の1,354台と、低迷が続く。統計には含まれていないタタ・モーターズは、電気自動車(EV)を含め、同11.0%減の4万1,557台で、3位相当だった(同社発表)。
二輪車販売は、前年同月比2.2%増の165万5,927台で、前月から好転した(添付資料表1、3参照)。モペッドは同7.7%減の3万7,264台と減少したものの、スクーターは同7.1%増の57万9,507台、オートバイは増減なしの103万9,156台と持ち直した。メーカー別にみると、前月から首位を奪還したヒーローが同2.0%増の48万8,997台、続くホンダが7.4%減の41万7,250台で、2位だった。TVSモーターは順位を1つ落としたが、同14.1%増の30万9,287台と、安定して成長している。スズキは5位で、同17.1%増の10万7,780台、ヤマハは7位で同28.2%減の4万6,086台だった。なお、地場EV二輪メーカーのオキナワは5月の製造、販売台数ともにゼロだった。生産、販売停止に関する同社の公式発表は行われていないが、車両に対する消防関連の安全性への不安や、厳格化する基準への対応、消費者の信頼失墜などが要因となり、2024年度(2024年4月~2025年3月)の収益が前年度比87%の大幅な減少だったことが報じられている(「エコノミック・タイムズ」紙4月14日)。さらに、元従業員からの給与未払いの申し立てや、販売店からの車両納入不良も報じられており、深刻な経営問題を抱えているとみられる(「ユア・ストーリー」紙2024年8月26日)。
(注1)タタ・モーターズの販売台数は単月の乗用車販売台数のみ公開。自動車販売台数全体とセグメント別、メーカー別、車種別、二輪車、三輪車統計には含まれない。
(注2)RBIは2025年2月、4月、6月に金融政策決定会合を開催し、6.5%から5.5%に政策金利の利下げを行っている。背景には、インフレ率の安定と、米国の関税措置が企業や家計の支出決定に与える影響による物価見通しの下振れが挙げられる(2025年6月11日記事参照)。
(大野真奈)
(インド)
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