ウクライナとロシアの直接交渉、ウクライナ側は無条件の停戦や主権の確保などを主張
(ウクライナ、ロシア)
調査部欧州課
2025年06月04日
ウクライナとロシアは6月2日、停戦に向けた直接交渉をトルコのイスタンブールで実施した。約3年ぶりとなる5月16日に実施された直接交渉(2024年5月20日記事参照)に続き、ウクライナ側はルステム・ウメロフ国防相、ロシア側はウラジーミル・メジンスキー大統領補佐官が各代表団を率いた。
交渉の結果、両国は、重傷・重病の捕虜および18歳から25歳までの捕虜の交換、ロシアからウクライナへの6,000人の戦死した兵士の遺体の送還に合意した。
ウクライナは以前から最低30日の無条件の停戦を求めていた一方、今回の協議でロシア側は、ウクライナ兵士の遺体回収を目的に、前線の特定地域における2、3日の停戦を提案した。ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は、停戦の目的は人の犠牲をなくすことにあるが、ロシアは戦争中のわずかな一時停止としか考えていないと批判した。
前回の直接交渉以降、両国はそれぞれ、停戦に関する覚書の提案文書を作成していた。今回の直接交渉の場で、双方の提案が出そろい、ウクライナはロシアの提案内容の精査に入る。ロイター通信(6月1日)によると、ウクライナ側が提示した覚書には、合意と交渉プロセスにおける次の主要原則が含まれる。
- 和平交渉に必要な前提条件として、陸海空における完全かつ無条件の停戦
- 信頼醸成措置(人道問題への対処):不法に連れ去られた子供および民間人の解放・返還、捕虜交換
- 侵略の再発防止
- ウクライナへの安全保障の提供、交渉および合意の履行への国際社会の関与
- 主権:ウクライナは、欧州・大西洋共同体への参加を選択でき、中立を強制されない。NATO加盟は同盟国の同意に依拠する。ウクライナは、自国の軍の数、配置(第三国への展開を含む)、その他の事象に対する制限を受けない。
- 領土問題:2014年2月以降にロシアが獲得した領土は、国際社会によって認められない。領土問題は、完全かつ無条件の停戦以降にのみ議論される。
- 制裁:ロシアに対する制裁は、必要に応じて制裁を再開する用意のもと、段階的に解除できる。ロシアの凍結資産は、賠償が支払われるまで、ウクライナの復興に使用されるか、凍結状態を維持される。
- 実施:明確で均衡のとれた、達成可能なロードマップへの合意
ウクライナ側の提案では、和平に向けた次のステップとして、(1)停戦およびその方法と監視、(2)信頼醸成措置、(3)首脳会談の準備(米国および欧州の参加を伴う)について、協議の継続、合意を挙げている。
ウクライナ側は、次の協議を6月20~30日の間に実施することを提案した。
(柴田紗英)
(ウクライナ、ロシア)
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