ボリビアの外貨不足、物価上昇、燃料不足に対する市民の受け止め

(ボリビア)

リマ発

2025年06月18日

ボリビア経済の課題として専門家が挙げる外貨不足、物価上昇、燃料不足について(2025年6月17日記事参照)、ジェトロは事実上の首都ラパスで市民の受け止めを聞いた。

庶民の買い物の場として親しまれているラパス市内のロドリゲス市場で、衣料品やカバン類を販売する店員に615日に話を聞いたところ、「中国から輸入している衣類やカバン類の店頭販売価格をこの半年間で3割以上値上げした。さらに値上げを続けることになるかもしれない」と話す。外貨不足で海外送金は容易ではなく、送金コストの負担も増えているという。

写真 ラパス市内のロドリゲス市場(ジェトロ撮影)

ラパス市内のロドリゲス市場(ジェトロ撮影)

写真 洋品店やカバン・バッグ店も多い(ジェトロ撮影)

洋品店やカバン・バッグ店も多い(ジェトロ撮影)

精肉販売店では、鶏肉を買い求める人の列ができていた。鶏肉を購入した初老の男性は、「ようやく鶏肉を買うことができた。市場を歩き回ったがどこも売り切れだった。鶏肉の価格上昇が続いているが、それに加え品薄になっている。道路封鎖が原因だ」と話した。ボリビアでは、エボ・モラレス元大統領の支持者による反政府抗議活動のための道路封鎖が続いている。

16日、鶏肉料理レストランの入り口には「鶏肉はありません」と書いた紙が貼られていた。鶏肉が調達できず、鶏肉以外の食材を用いた料理を提供する。モラレス元大統領が率いる同氏の支持者グループは614日、人道的な理由から道路封鎖を中断。一方でボリビアの経済悪化に抗議し、民主主義を求めるデモ行進は継続するとの声明を発表した。地元報道によると、16日時点では道路封鎖が続いている地域もあるもようだ。

写真 鶏肉料理店の入口に「鶏肉はありません」と張り紙(ジェトロ撮影)

鶏肉料理店の入口に「鶏肉はありません」と張り紙(ジェトロ撮影)

給油所の周辺道路には、ガソリンを買い求めて長い車両の列がみられる。複数のタクシー運転手に状況を聞いたところ、給油のため5時間から10時間待つことが常態化しているという。「SNS上で有志が給油所情報を共有するグループを作っており、今日はどこの給油所でガソリンが販売され、どのくらい車の列ができているかといった情報を入手できるようになった」と話す人もいた。

燃料不足は、公共サービスにも影響を与えている。給油を待つ列には警察車両も見受けられ、企業や個人の車両と同じように順番を待っている。国民健康基金(CNS)がラパス市内で運営するポリクリニコ・ヌエベ・デ・アブリル病院の救急車の運転手は、「給油の際は、他の一般車両と同じように順番を待つ必要がある。救急車両への給油割当はない。救急車の出動回数は燃料不足前より落とさざるを得ない。救急車呼び出しの依頼があると、まずは病院で患者の様子を聞いて緊急度を判断し、ごく一部の緊急性の高い患者のみに対応している」と明かした。

(石田達也)

(ボリビア)

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