タイ王国軍がカンボジア間の国境を全面閉鎖、貿易制限措置の応報も
(タイ、カンボジア)
バンコク発
2025年06月24日
タイ王国軍は6月23日、タイとカンボジア間の全ての国境検問所を閉鎖したことを発表した。国境閉鎖は同日の発表時から有効な措置となっている。
タイ国営放送PBS(6月23日付)によると、サケオ県の国境通過を監督する第1軍管区の命令により、すべての種類の車両、タイ人および外国人旅行者、あらゆる種類の貿易が禁止される。ただし、緊急の患者や学生の移動、日常生活に必要な活動など、人道的な目的による国境通過は例外となる。
スリン県、シーサケート県、ブリラム県の国境通過を担当する第2軍管区や、チャンタブリー県、トラート県を管轄する海軍国境防衛司令部も、同様の命令を出している。
タイ王国軍は、今回の措置について、カンボジアによるタイ領土への侵入の脅威(無許可の巡回、軍隊の増強、地形の改変など)や国境を越えた犯罪、コールセンター詐欺などの広範な影響に対応するために発令したもの、と説明している。同軍は6月7日以降、カンボジアとの国境紛争に対して、段階的な国境管理(2025年6月18日記事参照)を実行していた。
貿易上も制限措置の応酬
カンボジア側では、フン・マネット首相が6月22日、タイからの石油・ガスの輸入を停止すると発表している。フン・マネット首相は、国内のエネルギー会社が他国から十分に輸入調達することで国内需要を満たすことが可能と説明している。
タイ側でも、ピチャイ・ナリプタパン商務相が6月21日、商務省・外国貿易局(DFT)に対して、カンボジア産キャッサバ製品の輸入管理強化を指示。輸入者は事前登録・通知が必要で、カンボジア産キャッサバは国内産と分けて保管し、品質基準に満たない輸入を行った場合は登録資格が停止される。商務省は次の6つの検問所でのみ輸入を許可する。商務省によると、キャッサバはカンボジアからの最大輸入品目で、2024年の輸入額は2億461万ドル(HS071410)に上る。
- チャンタブリー県:Ban Pakkad(バン・パッカット)常設検問所
- サケオ県:Ban Khao Din (バンカオディン)常設検問所
- サケオ県:Ban Tha Phraya (バンタプラヤー)検問所
- トラート県:Klong Yai(クローン・ヤイ)税関検問所
- スリン県:Chong Chom(チョン・チョム)税関検問所
- シーサケート県:Chong Sa Ngam(チョン・サ・ガム)税関検問所
また、商務省・国内商取引局(DIT)は、16県にある60郡を対象に、10トン以上のキャッサバ(生・チップ)の移動を許可制とする措置を実施する。違反する場合、5年以下の懲役または10万バーツ(約44万円、1バーツ=約4.4円)以下の罰金、もしくはその両方が科される。
(藪恭兵、シリンポーン・パックピンペット)
(タイ、カンボジア)
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